みそ文

しずかに

何年前のことだろうか。たしか私は、何かで具合があんまりよくなくて、その日はおとなしく布団に入って養生しようと思った。まだ朝だったか、昼だったか、夕方早い時間だったか、とにかく明るかったけど、お布団でじっとしようと決めた。だから、お布団に入る前に、夫に頼みごとをお願いした。

「今日ね、クロネコさんが、○○を配達しに来られるから、再配達で私が大丈夫だと思った時間で、今日の何時から何時でお願いしてしまったけど、私寝るから、養生に専念するから、呼び鈴なったら、玄関に出て、受け取りしてください。お願いします」
「よっしゃ。まかせろ」
「じゃ。寝ますんで」
「養生がんばれ」
「うん。ありがと」

という会話の後、お布団の中で私は眠りに落ちた。どれくらい経っただろう。何度も鳴る音で目が覚める。呼び鈴だ。何時だ? 枕もとの時計を見る。クロネコさんだ。再配達の時間帯だ。呼び鈴が何度も鳴る。なんでだ? なんで夫は出ないのだ? いないのか? 外出したのか? 下痢でトイレか? それとも具合悪くて倒れてるのか? 寝ぼけた頭でいろいろ考え、寝室から襖を開けて居間に出る。具合がよくないため、立ち上がって歩くことが困難で、四つんばいで這って移動する。ぜえぜえ…。あれ? 目の前に夫がいる。しかも元気に座ってる。テレビを観てる? パソコンで将棋ゲームしてる?

「どうやらくん(夫)。呼び鈴なってる」
「しーっ!!! しずかに! いないフリしてるんだから(唇の前に人差し指をたてて小声で)!」
「な、なんで? クロネコさんだよ。再配達だよ」
「はっ!!! そうだった! 忘れとった! (と、慌ててインターホンをあげて、でも妙に落ち着いた声で)はい」
「ヤマト運輸です」
「はい。少々お待ちください」

夫、玄関に向かう。なにゆえ。あんなに明快な会話で、頼んだことを、頼まれたことを忘れ去ったのだ? 忘れただけでなく、そこでさらに、居留守を使うことを思いつくのはなぜなのだ? たくさんの疑問が脳内を駆け巡る。でも。とりあえず。荷物は無事に受け取った。よくわからないけど、たぶん、眠りの波のおかしなところで起きたせいか、具合のよくなさが倍増している気がする。いや、気がするんじゃなくて、まちがいない。とにかく寝よう。頼みごとの実現確実度を確保するための作戦は、次の眠りから目覚めてから、生きてたら、ご飯を食べて、麦茶も飲んで、痛いのがなくなってから、考えよう。そうしよう。

夫婦道は、一筋縄ではいかないもん。そんなことくらい知ってるもん。まともな体力とまともな気力とまともな思考力とまともな判断力を必要最低限整えてから臨まねば。なのである。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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