みそ文

アボカドの体験

どうやらの母(夫の母)は、たいへんに、おおらか、というのだろうか、柔軟、というのだろうか、何かを決め付けたり、執着したり、ということが、とても少ない人である。

何年か前の夏のこと。帰省した時の家族の食事。手巻き寿司にしてみたことがある。寿司飯、海苔、お刺身各種、蟹カマボコ、厚焼き玉子の短冊切り、ツナ、キュウリの細切り、カイワレダイコン、青ジソ、そして、アボカドも。

夫が両親に、「アボカドをマグロと一緒に食べてみんさい。安いマグロでも、口の中で、トロみたいなかんじになるけん」と、すすめる。

言われるままに、マグロとアボカドの組み合わせを試してみた両親は、どうも美味しかったらしく、父は、黙ったまま、もう一度、同じ組み合わせで巻き始め、母は、アボカドの思い出を語り始める。

「こりゃあ、アボカド、いうもんなんねえ。こうやって食べりゃあよかったんじゃね。だいぶん前に、人から貰うたことがあったんじゃけど、そのときは、どうやって食べるもんか、全然わからんかったけん、最初は、味噌汁の具にしょうかあ、思うたんじゃけど、なんか違う気がしたけん、焼き飯の具にしたんよ」

「おかあさん。それは、美味しかったんですか?」と、問わずにはいられない私。

「それようねえ。美味しいんか、美味しゅうないんかも、ようわからん思うたよ。もろうたはええけど、何いうもんかもわからんし、食べ物なのはわかっても、どうやって食べるもんかもわからんし。こうすりゃあ、よかったんじゃねえ」

ここで夫が、「わざわざ手巻き寿司にせんでも、アボカドだけ切って、わさび醤油につけて食ってもうまいけん。ほら、この、アボカドの切ったやつも、わさび醤油だけで、食べてみんさいや」と、お手本を見せるように食べる。息子の言葉に従う両親。

「ほんまじゃ。野菜か果物かわからんけど、刺身にして食べりゃあええんじゃね」

息子はさらに説明する。「アボカドだけでもええし、マグロの刺身の安いやつでええけん、買うてきんさい。一緒にわさび醤油で、ご飯のおかずにしてもうまいけん。今回は手巻き寿司じゃけん、アボカドも細長く切ったけど、もっと小さく切って、マグロの切り落としと一緒に混ぜてから、そのまま醤油つけるか、青ジソで巻いて醤油つけて食ってもうまい。刺身がないときは、シーチキンとマヨネーズと混ぜてもええけん」

私も続けて「お店でアボカド買うときは、硬くて青いかんじのよりも、黒ずんで柔らかめのほうが、美味しいですよ」と説明する。母は「はああ。知らん、いうことは、知らん、いうことなんじゃねえ」と、感心する。

私は、母の、何いうもんか(名前)も、どうするもんかも、わからない、そんなアボカドを、味噌汁の具にしてみようかな、と思ったり、いや違うな焼き飯だな、と、思いついたりする、その、挑戦者魂と、老いて素直にその場だけでも子に従う、柔軟な生き様に、心底、うっとりとした。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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