みそ文

あたり

妹も私もまだ小さかった頃のおはなし。

夏になると、お小遣いを握りしめ、農協か駄菓子屋さんで、アイスを買って食べるのが、小さな私たちきょうだいの大きな「おたのしみ」だった。ソーダバーは、味爽やかで、喉ごしもよく、何よりもそのお値段が、お子様のお財布にもお手頃で、しかも「あたり」が出たときには、もう一本タダ(無料)でもらえるという、さらなるお楽しみが付いていた。その日は小さな妹が、たぶん初めて自分で自分が食べたいアイスを選んだ日だったような気がする。ようやく一人でひとつのアイスを食べきれるくらいに大きくなって、自分用にひとつのアイスを買って食べるお許しが出たのではないかと思う。お店のアイスの冷蔵ケースをのぞきこんで、妹も私もそれぞれに同じソーダバーを選び、各自にひとつずつ購入する。もしかすると、そのときには、おつりのいらない金額を用意してきていて、妹も自分で自分の分のお金を、お店の人に手渡して、支払ったのかもしれない。そうして買ったソーダバーを、二人で並んで食べている間、妹はずっと嬉しそうだった。「わけっこ」じゃなくて一個全部まるまるだし、お金を払って物を手に入れるという経済活動に参加する体験もしたし。けれどアイスを食べ終わって、しばらくすると、妹は泣きそうな顔になり、なのに、ぷりぷりと怒ったみたいな口調で、いきなり言い放つ。

「このアイス、うそつきじゃ!」
「なんでアイスが嘘つきなん?」
「アイスのふくろに、あたりつき、ってかいてあるけん、このアイスをえらんだのに、あたりがついてない! このアイス、うそつきじゃ!」
「あのね。それは、はずれ」
「はずれ、って、なんなん?」
「くじ、にはね、あたり、と、はずれ、とあるんよ。あたり、って書いてあったらもう一本タダでもらえるけど、何も書いてなかったら、それは、はずれ、で、何ももらえんのんよ」

世の中には、妹のような勘違いさんが、きっと他にもたくさんいて、その後、アイスの袋の表記は、いつのまにか、「あたりつき」から、「あたりがでたらもう一本!」に変わっていた。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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