みそ文

孫の手

かなり年配のお客様(男性)が、「孫の手が要る」とおっしゃる。

「申し訳ございません。以前は置いていたのですが、ずいぶん前から置かなくなって、今は取り寄せもできないんです。もしもよろしければ、100円ショップなどでよく置いてあるのを見たことがありますので、一度訊ねてみてくださるか、足をお運びになってみていただけますか」
「前に来たときにもなくて、入れときます、言うとったのに、またないとは、どういうことや!」
「孫の手は、もう長い間、置いてないんですが、それは、どれくらい以前のお話でしょうか」
「先月か先々月や」

あれれ。それはおかしいぞ。孫の手は、もう、一年以上置いていないはず。

「お客様、お求めなのは、孫の手、なんですよね?」
「そうや。孫の手や」
「えーと、背中なんかが痒いとき、こう、届きにくいところを、ぽりぽりと掻く孫の手ですよね?」
「いいや。違う。虫に刺されたときに塗る薬じゃ」
「え? 虫刺されの塗り薬で、孫の手、ですか?」
「そうじゃ。虫に刺された時に塗る薬で、水みたいなので、容れ物の先のところが、孫の手みたいに曲がった形ので、足が痒いときに塗るんじゃ。先がまっすぐの容れ物のも、何度か買ってみたが、塗りにくいけん、だめなんじゃ。曲がっとると、塗りやすいんじゃ」

もしかしたら(取りに走る)! 痒み止めの液体塗り薬で、容器の首のところの形が、アンメルツヨコヨコみたいに、ぐいっと曲がっているのがある!

「お客様。もしや、こちらのお薬でしょうか?」
「そうや。これや。なんや。あるんやないか。毎日使うから、2本買う」
「お客様。こちらは、孫の手ではないんです。せっかく『孫の手が要る』とお求めくださっても、それでは残念ながら、このお薬とはわかりません。このお薬は、年中置いておりますが。(この夏は、一度も欠品させていない。前回来た時には、いったいなんと言って、お求めくださったのだ?)ぜひ次回は、液体の痒み止めの塗り薬、とお申し付けくださるか、この容れ物か、外箱か、どちらかお持ちいただけると、すぐにご用意できますので、よろしくお願いいたします」
「この容れ物の先の形が、孫の手に似とるじゃないか。だからこれは孫の手なんじゃ。また孫の手を買いに来る」

う。う。う。
パジャマ着て、杖をついて、御来店のおじいちゃんが、「孫の手」と言ったときには、「虫刺されの液体塗り薬」を思い出すこと。     押し葉

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

ときどき、思い出したように、いただいたメッセージへのお礼やお返事をリンク先の「みそ語り」に書いています。よろしければ、いつでも、どうぞ、どなたでも、ご覧ください。「みそ語り」では、メッセージをくださった方のお名前は書いておりませんので、内容から、これは自分宛かしら、と推理推察しながら読んでいただければうれしいです。手の形の拍手ボタンからメッセージをくださる場合は五百文字以内、文字の方の押し葉ボタンからメッセージをくださる場合は千文字以内となっております。文字数制限なくお便りくださる場合には、下のメールフォームをご利用ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (0)
暮らし (110)
仕事 (161)
家族 (301)
想 (23)
友 (47)
学習 (79)
旅 (16)
心身 (8)

FC2カウンター

検索フォーム

FC2Ad

Template by たけやん