みそ文

夏プール

友人と息子くんと友人の夫(スナドリさん)が、夏休み中のある休日、家族揃って、市民プールに出かけた。市民プールは、屋外と屋内と両方あって、たしか屋内の方が安かったような気がするし、外はこんなに暑いから、今回は屋内にしましょう、と、そのつもりで準備してお出かけ。

三人揃って市民プールに到着。券売機の前で、スナドリさんが固まる。「どうしたの?」と、たずねる友人。
「屋外プール四百円。屋内プール八百円。って書いてある。」
「あら、そうだったんだ。ま、そらそうか。いろんなコスト考えたら、屋内の方が高くて当然よね。」
「屋外は屋内の半額や。」
「そうなんやね。でも、今日は、紫外線防止するものも持ってきてないし、中で泳ぐよ。」
「ええええ。屋内は八百円もするのに? 外やったら半額なのに? 俺は予備のTシャツもあるから、紫外線大丈夫なんだけど。」
「私達は予備のTシャツないし、紫外線防止クリームもないし、日焼け防止するもの何もないから、今日は中。」
「でも、値段、倍もするのに。」

スナドリさんがこういうことを言い出したら、もう止められないことを、友人はよく知っている。スナドリさんにとって、何かと比べて安いこと、何かと比べて得なこと(それが見かけ上であっても)、は、とてつもない、ツボ、なのだ。この、ツボ、にはまったらもう、そう簡単には抜け出せない。夫婦関係にもとっくに手馴れた友人は、「それなら、好きにしたら? 私と息子は、中にするけん。外でも中でも、好きなほうに行ったらいいよ。」と、静かに軽く夫に伝える。

スナドリさんは、引き続き、券売機をにらんでいるが、友人は、自分と息子くんの屋内プール入場券を購入して、さっさと更衣室へ行く。スナドリさんもあきらめて、券を買って更衣室へ。

そして。友人と息子くんは屋内プールに入り、それと同時にスナドリさんは、一人屋外へと出て行った。

友人は、「夫よ。息子の水泳上達に興味がないのは知ってたが、四百円安いことが、そんなに大切だったのか? 四十路男が、炎天下、一人で泳いで楽しいか? 家族一緒にプールで泳ぐなんて何年ぶりかのことなのに、もしかしたら、家族になって、ほとんど初めてかもしれないのに、家族一緒の夏のひと時の奇跡のような時間よりも、半額の魅力のほうが優位なのか?」と、やるかたない思いを抱えた夏プール。

「でも、まあね、一緒に屋内に入っても、夫が一人でガシガシと遠泳コースを泳いでて、どっちにしても一緒に過ごすわけではないのなら、近くで目の前でそれを見たら、そっちのほうが腹立つかもしれないし、中と外、別々に、それぞれが満足して、むしろ家族円満だったかも。」と、そんなふうに言う友人は、何か独特の悟りを開きつつあるような気がする。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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