みそ文

蒟蒻シャンプーさようなら

 以前ここで書いた「お誕生日のお祝いに」の蒟蒻キノコシャンプーをその後も夫はずっと愛用しており近年は夫の誕生日プレゼントはこれと決まっていた。今年ももうじき4月になり夫の誕生日がくるからそろそろ購入の手配をしましょうと販売会社のサイトに赴く。そして「舞健泉(まいたけせん)」の文字をいそいそとクリックする。するとそこには見慣れたシャンプーの写真は掲載されているものの「販売終了」の文字が。

 夫に「どうしよう。今年もプレゼントするつもりだった蒟蒻シャンプーが販売終了になってる」と伝える。夫は「製造も終了したということなんかな」と言う。どうなんだろう、と、シャンプー本体を持ってきて裏側の製造者を見る。販売者とは別ではあるのだけどwebで調べてみるとこのメーカーの製品を販売する部門が別部門として別会社の形になっているだけでどこか別の販売ルートがあるというわけではなさそう。

 いつもwebで購入していたのでここの販売店に電話をかけることはなかったがもしかするとなんらかの形でどこかで手に入る情報が得られるかもしれないし代替になる製品情報に出会えるかもしれない。メールで問い合わせる方法もあるけど今回は電話をしてみようと決めて電話する。結論からいえば在庫限りで販売終了となり既に在庫はなく再販の予定もなく製造も終了している、本当に本当にごめんなさい、ということだった。そうですか、たいへん残念ではありますが、これまでよい商品を提供してくださってありがとうございました、とお礼を述べて電話を切る。

 夫には「製造も終わったんだって」と伝える。夫が作った白菜と豚肉のミルフィーユ鍋で夕食を摂る。そういえばこの会社の製品で以前炭のシャンプーのサンプルをもらったことがあったかも、と思い出す。当時そのサンプルを使ってみたけれど蒟蒻キノコシャンプーの素晴らしさには及ばず採用しなかった気がする。蒟蒻キノコシャンプーは育毛効果も謳っているがなによりも頭皮を清浄にする効果が高くてこのシャンプーで洗うと数日経過しても頭の痒みを感じないという点を夫は高く評価している。実際に彼の抜け毛は随分減ったと思う。しかしもう存在しないものは求めても仕方がない。これはこれで我々になにか次のステージへ移行しなさいというお告げでもあろうから何か新しき佳きものとの出会いが近くに来ているのかもしれない。

 夕食を終えてからもう一度蒟蒻キノコシャンプーの販売会社に電話をかける。電話に出てきた方は先の電話でのオペレーターさんとは別の方。

「先ほどオペレーターのハセガワ様に担当していただいた者なのですが今一度ご相談したいことがありまして再度お電話差し上げました。登録電話番号を申し上げます」
「どうやらみそ様ですね。恐れ入りますがご本人確認のためにご住所を教えていただけますでしょうか。はい、ありがとうございます。どういったことでお電話いただきましたでしょうか」
「これまで愛用しておりました舞健泉スカルプシャンプーをwebで再度購入しようと思いましたところ販売終了と表示されていたものですからお電話を差し上げましてどこか別のところででも購入する方法はないものかとご相談いたしましたところハセガワ様からは既に在庫もなく販売も製造も終了しており再販の予定もないとのご案内をいただきましてそうですかとお礼を申し上げ先ほどの電話は終えました」
「そうでしたか。これまでご愛用くださいましたのに誠に申し訳ないことでございます」
「ええ、このシャンプーですと頭皮が痒くならずたいへん気持ちよく使えていたものですからとても残念ではあるのですが、今後舞健泉スカルプシャンプーの代わりとなるシャンプーをさがすにあたり、御社の炭ミネラルシャンプーのサンプルをいくつか送っていただくことができたらと思いまして」
「はい、かしこまりました。サンプルのご用意は可能です。ただお一人様につき2点のみという制限がございますので2回分のみのお送りとなりますがご了承いただけますでしょうか」
「はい、もちろんです、助かります」
「それではお送りするご住所は登録のご住所でよろしいですか」
「はい、お願いいたします」
「舞健泉のスカルプシャンプーは育毛効果が優れたシャンプーということで販売しておりましたが炭ミネラルシャンプーのほうにはそういった成分は含まれてはおりません。ですが頭皮をすっきりとケアするという意味ではたいへんおすすめの商品ですのでぜひお試しくださいませ」

 そういうわけで以前にもサンプルをもらって使ったことがあるかもしれないけれどどんな使い心地だったかの記憶が定かでないのでこのたびあらためて送ってもらう炭ミネラルシャンプーが届いたら使ってみよう、というか夫に使ってみてもらおう。そしていいようであれば今年の誕生日プレゼントは炭ミネラルシャンプーにしもうひとつであれば次なるよきシャンプーを求めて彷徨う旅路をともに歩む私の気概と勇気をプレゼントすることにしようか。     押し葉

いとしの桜餅

 我が家の居間にかけてあるカレンダーには毎月何かおいしそうな食べ物の写真がついている。1月はちらし寿司、2月はみかん、3月は桜餅。ついでに4月以降もめくってみると、4月は西京焼き、5月は和菓子の詰め合わせ、6月はさくらんぼ、7月はうなぎ、8月はメロン、9月は果物盛り合わせ、10月は土鍋で炊いた白米、11月はおでん、12月は蟹海老いくら帆立雲丹。

 3月になってからこのカレンダーの前を通るたびに『桜餅おいしそうだなー食べたいなー』と思っていた。そう思っただけで口に出したことはなかったのだけど、ある日夫がそのカレンダーを見ながら「桜餅おいしそうだなー食べたいなー」と声に出して言うから「うわーどうやらくんも? 私もずっとそう思ってた」と言いふたりで「おいしい桜餅食べたいね」と話す。

 何日かして夫が「うちの近くの安倍川餅のお店でも桜餅売ってるんだって」と言う。webを眺めていたら遭遇した情報らしい。じゃあじゃあ買ってみようよ、でもあそこは安倍川餅もお昼すぎて行くと売り切れててもうないことが多いから早いほうがいいよねきっと。

 日曜日には一週間分の食材買い出しに出かける(週の途中の木曜日に生協さんの配達はある)。たいていは午後になってから出かけるがこの日は朝10時過ぎに家を出て安倍川餅屋さんに立ち寄る。桜餅、ある。5個で650円。うわあ、なんてきれいな桜餅なんだろう、とうきうきわくわくした気持ちを抱えつつ車の中に桜餅を置いてスーパーでの食材買い出しに励む。

 帰宅して食材を片付けるところに片付け緑茶を用意する。袋から桜餅を取り出しただけでふわーっと桜の葉の香りが漂う。桜餅が入っているパックを開けるとさらにぶわーっと香る。薄桃色のもち米がピカピカつやつやとしていて一粒一粒が立っている。桜の葉の塩漬けは緑と茶色の間の色で繊細な葉脈が広がる。中のあんこはこしあん、滑らかで軽やかでこれならいくらでも食べられそう。

 「うわ、すごい桜餅のにおいがする」と言いながら居間に入ってきた夫に「私こんなきれいな桜餅を見たのは初めて。私の人生の中でこの桜餅は最高峰だと思う」と伝える。夫は「どれどれ」とパックを開け「うわ、桜餅の香りがすごいな」と言う。夫は一口二口三口ほどで一個の桜餅を食べつくし「うまい、これはうまい」と続けて二個目を食べる。私もその勢いにつられて一緒に二個目を食べる。夫が「桜餅の桜の葉っぱっておいしいよなあ、この葉っぱがないよりもあるほうが格段にうまいけど、おとなになるまでこの葉っぱが食べられるって知らんかった。この葉っぱの塩味とあんこと餅の甘さとの兼ね合いが素晴らしいのになあ」と言う。

「私も小さいときは桜餅の桜の葉っぱはどちらかというと苦手でいつもわざわざ外して食べてたよ」
「でもそれは葉っぱを食べられるのを知ってて外しとったんじゃろ?」
「うん。私が葉っぱを外すと母や祖母が『その葉っぱがおいしいのにもったいない』って言うんだけど、だからといって母も祖母も私が剥がした葉っぱだけを好んで食べることはなかったなー」
「それはないやろ」
「どうやらくんはいつから桜餅の葉っぱも食べるようになったん?」
「結婚してからじゃないかなー、うちはとうさんもかあさんもみんな桜餅の葉っぱはむいて食べてたから誰もこの葉っぱが食べられるって知らんのんちゃうかな」
「え、そうなん? それならどうやらくんがおとうさんとおかあさんに桜餅買ってって一緒に食べて葉っぱも食べられることを教えてあげたらいいのに」
「うーん、でも桜餅の時期におれが広島にいることってないからなー、いたとしても桜餅のこと思い出してわざわざ買うとも思えんし」
「結婚してから葉っぱも食べるようになったって言ってたけど私達がどこに住んでいたときのことなん?」
「うーん、それはおぼえてない。けど『あー、このひと葉っぱまで食べようる』と思ってそのときから食べるようになったのはおぼえてる」
「そのときに私に『桜餅は葉っぱまで食べられるん?』って訊いたりした?」
「それもおぼえてない」
「じゃあ、私が『食べられるよ、一緒に食べたほうがおいしいよ』と説明したかどうかも」
「おぼえてない」

 結局この日は5個入りの桜餅のうち夫が2個私が3個食べた。

 我が家の近くの安倍川餅屋さんの安倍川餅はおいしいからときどき買って食べるのだけど、春に桜餅を買って食べるのは初めてのことで、こんなに美しくておいしい桜餅の存在をこれまで知らないままでいたとは、なんてうっかりしてたんでしょう、と思う。この春のうちにもう何度かこの桜餅を買って食べたいね、と夫と話し、翌週にはまた買ってきて今度は夫が3個私が2個食べる。

 大きさといい形といい香りといい味といいその存在すべてが美しくおいしい桜餅だからと今週の日曜日にも夫が買い求めに行ってくれたのだが「すみませんね、今日はお彼岸のお菓子作りが忙しくて桜餅は作らなかったんですよ」ということで購入できず。翌日夫が山に行っているあいだに午前11時頃私があらためて買いに行ったのだが「ごめんなさいね、今日の桜餅はもう売り切れたんです」と言われる。「桜餅の販売はいつごろまでなんですか? 桜の花が咲く頃までですか?」と尋ねると「うーん、どうでしょうねえ、なんとなくですが入学式の頃まではやってますねえ」とのこと。ということは4月の6日頃までなのだろうか。

 そして今日は仕事が午後からで午前中用事があって出かけたついでに安倍川餅屋さんに立ち寄ってみたら桜餅の最後の1パックが店頭にあり「桜餅ください」と650円を財布から出す。持って帰り緑茶をいれ桜餅をしばし見つめてその姿と香りの美しさにうっとりとしてからはむっと噛む。緑茶と一緒でももちろんおいしいけれど、ここの桜餅は緑茶なしでもそれだけでもさわやかでのどごしがよい。おいしかったー、と満足して元気よく出勤し仕事に励む。仕事を終えて帰宅したら桜餅の元気の余韻の勢いで夕ごはんをこしらえる。ちらし寿司(瓶詰めの素を混ぜるだけ)とほうれん草の卵炒り、豚肉とニンジンと白菜の汁多めの中華炒め煮、くるみ小女子、真空パックを開封するだけのあさりの佃煮、筍入りおから、筍の有馬煮。夫が筍の有馬煮を食べて「うわー、この筍の山椒ようきいてるなー」と言う。

「それ、筍の有馬煮だよ。なんでかはわからんけど私の中で有馬煮といえば山椒味の煮物だと思ってるなあ」
「へえ、そうなんや、有馬煮、と言われてもおれはなんも思いつかんな」
「有馬といえば有馬温泉、温泉といえばー、で止まる?」
「いや、そこまでも連想せんなー、有馬煮、ということは馬が関係してるんかなー、と思えば思うかな」
「ええー、有馬ときて馬かなーはないやろ。有馬地方のことについて私は全然詳しくないけど、もしかすると山椒の産地なんじゃないかな」
「有馬くらい山の中やったら山椒はありそうだけどそうなん?」
「いや、知らんけどなんとなく。私が勝手に有馬煮といえば筍にかぎらず山椒の実がいっぱい入った煮物だとイメージしているということはどこかでそういう体験があるからじゃないかなーと思って」

 そして食後には桜餅。見た目がかわいくて美して芳しくておいしくていとしい桜餅。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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