みそ文

安心快適電話生活

 私の勤務先の薬局に来てくださる患者さん(70才前後くらいの男性)はご夫婦ともに「詐欺などに遭うといけないから」と自宅の電話も携帯電話も自分が登録している電話番号からの着信のみ呼び出し音を鳴らす設定にしておられる。登録電話番号以外のところからかかってきた場合には電話をかけてきたひとには「お繋ぎできません」という案内が流れる。

 なぜその患者さん(仮に大谷さんとしよう)のそんな電話事情を知ることになったかというと、大谷さんが来局くださったときにすぐに揃わない薬があったため「ごめんなさい、足りない薬をお取り寄せして完成した時点でお電話いたしましょうか」と相談することになり、大谷さんも「今日はいつもとちょっと薬変わったからやろ、先生がちょっとでも安い方がいいやろうからジェネリックで調剤してもらえるように書いとく言うてたからそれやろ。いい、いい、待ってる間にそのへんでうちの(配偶者)と一緒に昼飯食ってくるし、その間に作っといて。できたら携帯に電話してくれたら取りにくるよ。飯食ったりお茶飲んだりしてゆっくりしてるから急がんでいいよ」と言ってくださった。「では、以前に教えてくださったこちらの携帯電話番号で変更ないですか?」「うん、それで合ってる。ほなよろしく」という会話でいったんお見送りした。

 まもなく不足していた薬が届き、よしよし大谷さんのお薬完成、さあお電話差し上げましょう、と大谷さんの電話番号に電話をかけるが「お繋ぎできません」という案内が流れてそのまま切れる。ええと、ええと、まさかの着信拒否ですか、と受話器に向かってつい語りかけるが解決しない。何度かかけてみるものの「お繋ぎできません」と案内されるのみ。しかし大谷さんはこちらからの電話を待ちながら飲食店でくつろいでいらっしゃるということだから、電話がかかってこないということはまだ薬ができていないことだと思ってずっと待っていてくださったらどうしましょう、としばし考える。他の回線(FAX)からかけてみるか、それとも誰かの携帯電話からかけてみるか、しかしそれもなあ、うーん、と考える。待ちきれなくなって来てくださった大谷さんに「大谷さーん、電話がー、かけてもー、何回も何回もかけてもー、繋がらなかったのー、着信拒否だったのー、どうしてー」と訴える展開もありかなと同僚と話したが、そうだ、もしも処方箋発行している医療機関からの電話ならばつながるのであれば「薬局の薬ができたそうです」という伝言を託すことはできないだろうか、と、大谷さんかかりつけのクリニックに電話してみることにする。

 クリニックの受付の方は「いいですよ、うちで聞いてる大谷さんの携帯番号にかけてみますね、薬局さんから薬ができあがってますって連絡あったって伝えればいいんですね、なんでつながらないんでしょうね」と快諾してくださる。しばらくの後再びクリニックに電話して「大谷さんにつながりましたでしょうか」と確認すると「ああ、はいはい、すぐにつながりましたよ。薬局さん薬できてるそうですよ、なんか電話が繋がらないそうですよ、って伝えておきました」と教えてくださる。深々とお礼を伝えて大谷さんの来局を待つ。

 思ったよりもずっと遅くなってからふたたびおいでになった大谷さんが「いやあ、ごめんごめん、電話してくれいうて頼んだのに繋がらんかったんやろ。クリニックから電話かかってきて、なんか新しい病気でも見つかったんかと思ってびっくりしたわ。いやー、この携帯電話、登録してある電話番号以外のとこからかかってきたのは繋がない設定にしてあってな、うちはトシヨリ夫婦ふたり暮らしやから詐欺なんかにでも遭うたらいかんからいうてそうしてて、さっき薬頼んで飯食いに行くときに『あー、そういえばまだこの携帯に薬局さんの番号登録してなかったなー、電話がかかってくるまでに登録しとかなあかんなー』とは思ってん。なのになあ、そのあと昼飯食うつもりで店に入ろうとしたところでうちの(配偶者)となんでもないことでケンカになってしもうて、うちのが怒って『もう帰るわ』言うからこっちも『そうか帰れ帰れ』言うて家までいっぺん送ってそれからまた出てきて。それで薬局さんの番号登録しようと思ってもうちのに訊かなやり方わからんでなあ、車の中で『あーそろそろかかってくる頃やなー』とか『ケンカする前に登録だけしといたら(配偶者に頼んで登録設定してもらったら、の意だろうか)よかったなーとか』とにかく『しまったなー』とは思ったんやけど、まあ、直接行けばその頃には薬もできてるやろ、思うてたらクリニックから電話かかってきて。手間かけさせてわるかったなあ」といっきに話してくださる。

「ああー、そうだったんですかー。お帰りになられたら奥様と仲直りしてすぐにうちの薬局の番号登録してくださいね」
「わかった、するする、仲直りはすぐにはできんかもしれんけど」
「もしも携帯につながらない時にはご自宅にお電話差し上げることもご家族のどなたかや留守番電話に伝言を残すこともできるんですが、前に教えてもらったご自宅の電話番号、大谷さんの引っ越し前のお家のときのみたいで」
「あー、それもう今は使ってない番号やわ。消しといて。それに今のうちの電話もおんなじで登録してあるところからの電話しか着信せんようにしてあるからどっちにかけてくれても一緒やし、かけるときはこの携帯にかけてくれたらいいわ」
「かしこまりました、ではまた何かお電話差し上げる必要がある時にはそういたしますね、この薬の袋に書いてあるここの薬局のこの番号をぜったいぜったいぜったいに登録しておいてくださいね、ぜったいですよ」
「うん。しとくしとく」

 私も自宅の電話携帯電話ともに非通知からの着信は拒否するようにしてあり、なおかつ登録電話番号以外の番号からの電話は一応着信呼び出ししてくれても基本的には出ない。何か配達予定などの心当たりがあれば配送担当さんの携帯電話からかもと思い出てみて当たりであればその番号は配送会社等の名前で番号登録する。留守電に用件メッセージを録音してくれている人でこちらも用事がある人の場合はこちらからかけ直したりまたかけて来てくれた時には出られるようその番号が誰なのかを登録する。ぜひともその場で出たい場合は録音の途中で電話に出る。
 フリーダイヤルからの電話には全くでないので勧誘電話の対応をすることはなくなり、心当たりのない電話番号からの電話にも出ないから各種詐欺電話に遭遇することはいまのところない。
 夫が遠方の山に行っているときには「遭難していたご主人を救助しました」という連絡が来ることがあるかもしれないと常に思ってはいるもののそんな重要な用事なら留守電に録音してくれれば在宅していれば電話にでるし不在ならばかけなおすし、それができなくて夫の救助を知るのが遅くなったとしても場合によっては死に目に会えなかったとしてもそれはそれで仕方ないよね、ということにしている。
 
 今はそういうやりかたで十分快適な電話生活を営んでいるが、これから先もっと年を重ねていろんな判断力が低下していったときには、私も大谷さんのように自分が登録している電話番号以外の番号からの着信はいっさい呼び出ししないように設定するくらいでいいのかもしれないと思った。いや、身内や親しい誰かが私が登録している電話番号携帯番号以外のところから何か緊急事態のために電話を借りてかけてくるということもまったくないとはいえないけれども、まあそのときには電報でもハガキでもメールでも工夫してくれ、頼む。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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