みそ文

水茄子にうなる

 到来物の水茄子の最後の一個を今日ぬか床から引き上げた。水茄子は大阪泉州地方の名産で通常の茄子に比べると果肉がたいへんにジューシー。名前が水茄子だからといって水っぽいわけではなくみずみずしい。生のままで手でちぎりフルーツのように食べてもよし、もちろんかぶりついてもよし、包丁で輪切りにしてオリーブオイルで焼いてもよし、縦長に切って(他の切り方でもよい)ベーコンとともにパスタにするもよし、塩とミョウバンをすりこんでからぬか床に沈めるもよし。

 今回到来の水茄子については上記のうち「かぶりつく」だけはしていないがそれ以外の食べ方ではすべておいしくいただいた。ここに生ハムがあったら水茄子ぬか漬けを生ハムでくるんで食すとこれまたおいしいのだが今回は生ハム水茄子はなし。生ハム水茄子は生ハムメロンよりもよっぽど天下を取れそうなおいしさなのだがまだ外食でお目にかかったことはない。

 ぬか床から引き上げた水茄子を手でちぎりおおまかに八等分にする。小鹿田焼(おんたやき)の渦巻き模様の器にのせて食卓に置く。ぬか床からは他にもキュウリとニンジンとダイコンを取り出して切る。大きな黄色い桃太郎トマトの皮をトマトピーラーでむく。私はトマトの皮も大好きだが夫はトマトの皮の筋っぽさと酸味があまり得意でないらしくトマトそのままだとあまり食が進まない。しかしトマトの皮をむくと皮の筋っぽさも酸味も気にならないようで夫もトマトを意欲的に食べる。トマトの皮を包丁でむくのは私にとっては手間で、湯むきをする気概は私にはないが、トマト皮むきピーラーを使えば私もトマトの皮をむこうという気になる。通常のピーラーも我が家にはありそれはそれで活躍中なのだが、この夏導入したトマト皮むきピーラーはトマトの皮のようなやや柔らかめ薄めの皮をむく作業に適している。「このピーラーを使うとね、私でもトマトの皮をむこうっていう気になるん。皮をむいたらどうやらくんもトマトパクパク食べるじゃろ」と言って今日のトマトの皮むきは夫にお願いした。夫は「むむ、ちょっとコツが要るな」と言いながらも桃太郎トマトを丸裸にし、私がそれを一口サイズに切り食卓にのせた。夫は「トマトの皮がむいてあるとトマトの味と食感を味わうことに没頭できるのがいい」と言う。食べ物を食べるときに各人の体にとって快適な食感を得るのはだいじなことのように思う。「皮に栄養があるんじゃけん皮を食べんにゃあ」というご意見もあるだろうが、栄養のある皮を無理して食べることで食が進まず結局摂取量が少ないのでは本来摂りたい果肉部分の栄養まで十分に取れなくなる。それになにより食事における「たのしい」「おいしい」気持ちの度合いが異なる。トマトの皮も好きな私だがむいた皮だけを食べようとは思わないので、皮についてはプチトマトをまた皮ごとつまみ食いすることで「トマトの皮を食べたい欲」は満たせるであろうと思う。

 今日の夕餉の食卓には水茄子とトマトの他に金時豆、ハムステーキ、目玉焼き、そしてご飯。水茄子のぬか漬けにはすりごまとお醤油をちろりとかける。水茄子は見た目はさくっとしているけれど口に入れて一口かむと口の中いっぱいに水がほとばしる。かみ、かみ、かみ、と咀嚼するたびに、じゅわ、じゅわ、じゅわ、とひんやりした水茄子果汁が口腔粘膜を潤す。夫が「この水茄子はおいしい水茄子だったなあ」としみじみとつぶやく。

「うん、本当においしかったねえ。これが最後の一個だよ」
「大阪に住んでいた頃に水茄子の存在を知らなかったのが悔やまれるなあ、あそこだったらそのへんの店で売ってたはずなのになあ」
「でもその後こうして生きているあいだに水茄子おいしいって知ってわりと夏ごとに堪能するようになってよかったじゃん、ずーっと知らんまんまじゃなくてラッキー」
「そうやなあ、それにしてもうまいなあ、うなってしまうよ」
「うんうん、まさに、うなる、だねえ、水茄子のおいしさに感心して、水茄子、きみ、えらいよ、えらすぎるよ、という気持ちで、うなるねえ」
「水茄子はいろんな食べ方ができるけど、おれはやっぱりこのぬか漬けにしたのが一番好きかな」
「この前は我が家のごま欠品中ですりごまができんかったけど今日はすりごまもあるしね」
「完璧やなあ」

 水茄子は夏の至福おたのしみ。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

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