みそ文

ノドグロ、メギス、赤イカ

 北陸では珍しい快晴だから干せる限りの洗濯物を洗濯機で洗っては干す。昨日の夕方から急にぐっと涼しくなったから、ラグをフリースのものに敷き替える。昨日のうちにお日様で干しておいたこたつ布団を夫と協力してこたつにかける。つい先日まで今年はまだこたつ布団の設置は無理と思える暑さだったけど、昨日今日くらいの気温だとコタツそろそろあってもいいかもと感じる。

 家の中の片付けと冬支度を終えて隣県の魚食堂に出かける。二階の食堂は満席で少し待ってもらうようなんだけど、と一階の魚売り場の人が教えてくれる。順番待ちの紙に名前を書く。それから魚を選ぶ。のどぐろはもともと食べたいと思って来たから今日ものどぐろを選ぶ。お店の人に「どうする? お刺身?」と聞かれて「煮たのと、焼いたのと、味噌汁と」と答える。「じゃあ、頭を汁にして、胴体を一個は煮てもう一個は焼く?」「はい、そうしてください」

 夫が「オコゼの唐揚げ食べたいなあ」とショーケースのオコゼを見る。お店の人が「ごめん、今日は二階混み合ってて、オコゼを唐揚げにしようと思ったら、普段でも時間がかかるんだけど、今日は相当時間がかかると思うわ」と言われる。「そっか、じゃあ、今日はいいです。あ、メギスがある。メギスの塩茹で食べたいなあ」と夫が言い、私は「なに、それ、メギスを茹でるの?」と聞く。お店の人が「メギスの塩炒りね。おいしいよね」と言う。

 メギスはお皿に15匹くらいひと盛りになっている。夫が「でも、ノドグロ食べるのに、メギス、こんなにたくさんは食べられんなあ」と言うとお店の人が「食べたいだけ出してきてあげるよ」と言ってくださる。私が「じゃあ、私は二匹食べる」と言い、夫が「おれは四尾食べるかな。じゃあ六尾ください」と頼む。奥の冷蔵庫から大きめのメギスを六本トレイに載せて秤にかけて、ノドグロのトレイに一緒に置く。二階の食堂が開くまで一階で魚を見て待つ。二階からお客さんが降りてくる。もうそろそろ呼ばれるかなあ、と思いながら魚介類の観察をする。お店の人が「二階、お料理作って出すのも片付けるのも追いついてないみたいで、お客さんがおりてきてもまだもう少しかかるみたいで、すみませんね、もしあれやったら、ここ寒いし、外で日向ぼっこしてくれててもいいよ、順番来たら名前呼びに行くから」と案内してくださるが、「はい、魚見てます」と店内で過ごす。

 順番が来て二階にあがる。海が見える窓辺の席に座る。日本海にしては珍しく穏やかで見晴らしがよくて空が青い(空の色は灰色がかっているのが標準)。一階で買ったノドグロの調理方法は一階からメモがついてきているのでそれを確認。「頭は味噌汁に、身はひとつは煮て、もうひとつは焼いてください、味噌汁はひとつはネギなしでお願いします。メギスは塩茹でにしてください」とお願いする。お店の人が注文用紙のメギスのところに「塩炒り」と書く。

 夫が「なにか刺し身も食べたいなあ」と言って刺し身のメニューを見ていたからイカの刺し身を頼もうとしたのだが、お店の人が「イカのお刺身千円だけど、一階の赤イカも千円だったでしょ、お刺身だけだとけっこうな量があるけど、どうしましょう」と言う。二階で使うイカの刺し身用のイカも一階で見た赤イカと同じ赤イカだと言う。イカの体部だけで50cmくらいの大きさははあったから二人で食べきるのは無理かも、と諦めようかと思ったが、お店の人が「一階で赤イカ買ってもらったことにして、半分は刺し身にして、もう半分は天ぷらにしたらどうかな。目先が変わるとけっこう食べられるもんだし、天ぷらなら残ったらお持ち帰りにしてもらうこともできるよ」と提案してくださり、ではそれでお願いします、という形に。酸っぱいものも食べたいからともずくの酢の物も単品で注文する。普段ならばこんなにたくさんはとても食べられないけれども、夫が「今日はおれ山からおりて来たばっかりでたくさん食べられる身体になってるからたくさん食べるから」と言うのでいつもよりもたっぷりめに注文した。お店に来るまでの車中で夫が「あそこの食堂、ご飯おかわりできたよなあ。最初から大盛りにしてもらおうかあ」と言っていたから注文のときに「ご飯大盛りにしてもらう?」と聞いたが夫は「食べてから考える」と言い、お店の人が「あとからいくらでも何回でもおかわりできるから」と言う。

 最初にメギスの塩茹でが出てくる。夫が「レモンをかけて食べるとうまいんだ」と言いながら付属のレモンを絞ってくれる。「会社の忘年会とかで魚蟹民宿に泊まるじゃん、そのときの朝ごはんにときどきこのメギスの塩茹でが出てきて、これはうまいなあ、これだとメギスがいくらでも食べられるなあ、と思ってたんだけど、それ以外のところではメニューで見たことがないなあ」と夫が言うように私はこれまで一度もメギスの塩茹でを食べたことがないと思う。夫は「沖縄のマース(塩)煮に似てるかなあ」と言う。どれくらいの濃さの塩水で茹でてあるのかはよくわからないがほどよく塩味がして身がさっぱりと食べられておいしい。茹でてあるのにこの地域の人たちがこれを「塩炒り」と呼ぶ理由も謎だが、おいしいから不問とする。

 赤イカのお刺身は身もゲソもおいしいけれど夫が「テンペラのところが一番おいしい」と言う。イカのひらひらとした部分のことを「テンペラ」と呼ぶのか。たしかに他の部位よりもコリコリとしていて味が濃いかも。(後日追記。イカのひらひらとした部分は「エンペラ」と呼ぶようである)

 ノドグロ煮とノドグロ焼きは安定した官能の味。ノドグロの頭の味噌汁とご飯と漬物が一緒に運ばれてくる。もずく酢にはレモンの輪切りと生姜が乗る。赤イカの天ぷらは大きなお皿にたっぷりで「持って帰って夕ごはんのおかずにしたらいいね」と言いつつ食べる。夫がご飯をおかわりして「ああ、よく食べた」と食べ終えたときにも私はまだご飯と味噌汁をゆっくりと食べていて、天ぷらを天つゆにつけて食べた後、もずく酢のレモンと一緒に食べてみるとそのほうがおいしくて、この赤イカの天ぷらは酢で食べたほうがおいしいのかもともずく酢と一緒に食べるとさらにおいしいなと食べているうちにどんどん減り、夫が「これなら食べきれそうやなあ」と数切れ取って食べ青じそと生麩の天ぷらも食べたらお皿は空になった。

 ごちそうさまでした、と店を出て高速道路に乗って帰る。加速して走行車線に入る前も入るときもその後も何度も「ああ、おいしかったねえ」と感嘆する。お魚がおいしいお店はいろいろあるけれど、あのお店で特にノドグロを食べたあとは、脳内に分泌される脳内麻薬のようなものの種類が他の時とは違うのだろうか、ちゃんとまともに運転してはいるのだけど、なんというかこう「廃人」になりそうな陶酔感にまみれる。

 帰りにスーパーに立ち寄り食材の買い出しを行う。夫が「こういうお腹いっぱいのときに買い物すると無駄な買い物をしなくていいよね」と言う。私が「無駄な買い物をしないだけならいいけど、こういうお腹いっぱい状態で買い物をすると必要なものを買うのも忘れることがあるじゃろ。それは買い物として勝ち負けで言うと負けのような気がする」と言うと夫は「そうやなあ、それは無駄なものを買うよりも買い物としてはさらに負けかもしれんなあ」と言う。

 買い物を終えて帰宅して夫が「あ、りんごジュースを買うの忘れた」と言う。夫は日に何度かりんごジュースをグラスに注いで飲む。「りんごジュースなら冷蔵庫にまるまる一本あったよ」と私が言うと夫は「一本だけしかないじゃろ。たぶん一週間には足りん」と言う。「また、どうやらくんが仕事帰りに自分で買ってきてもいいし、そうだ、どてら(広島の実家)の父が荷物に入れて送ってくれてた青森のりんごジュースがあるじゃん。おいしいやつ」「あ、そうか、よかった」
 青森のおいしいりんごジュースは本当においしくてデイリーユースにはもったいない気がするけれど、青森のりんごジュースとしては、ここぞというときに「おいしいっ」としみじみと飲まれても、日々ちびちびと小さく「うまいな」と思いつつ飲まれても、どちらでも不満なく満足なのかもしれないなあ。     押し葉

車中泊の快適

 夫は昨夜から槍ヶ岳に出かけた。仕事を終えて高速道路を走り登山口駐車場にて車中泊。今朝早くに登り始めて今日は槍ヶ岳山荘泊。「土曜日にお天気がよければ山頂まで行くかもしれないけど、土曜日の天気はいまいちっぽいから山頂は日曜日にするかも。あとはひたすらおりてくるだけ。日曜日の夕方に帰ってくる」ということだったから、今頃は山小屋で消灯時間を迎える頃だろうか。

 夫が前々回どこかの登山口駐車場で車中泊をしたときにはまだずいぶんと暑かった。蚊よけスプレー(私が旅行かばんに常備しているもの)を貸してほしいと言いそれを持って行きスプレーして寝たが「おかげで蚊には刺されんかったけど暑くて暑くて夜中に何度も目が覚めた」と言う。

「車の窓は少し開けて寝てるんでしょ。それでもそんなに暑いのかなあ。あんなに標高高いところで」
「ううん。車の窓は全部ぴっちり閉めて寝た」
「暑かったら窓を開けて涼しい空気を入れたらいいのではないかしら」
「蚊が入ってきたらいやじゃったけん」
「蚊よけスプレーしたんじゃろ。あのスプレーしとくと少々窓開けてても蚊が入ってこないすぐれものなんだよ」
「スプレーして念の為に窓も閉めて寝た」
「車の窓を閉めきって寝るとか私には無理だわあ。自分の熱気でどんどん暑くなって、自分の吐いた二酸化炭素でどんどん息苦しくなるじゃん」
「そうかあ。わかった。次は窓を少し開けて寝てみる」

 そんな話をしてしばらくして、夫はまた車中泊を伴う登山に出かけた。帰宅してから「このまえは暑かったのに、今回の車中泊はすっごく寒かった」と言う。

「たしかに、急に涼しくなったもんねえ。でも窓閉めてもずっと寒かったの?」
「ううん、今回はこのまえのみそきちどんさんのアドバイスに従って窓を少しずつ開けて寝た」
「ええと、窓を開けて寝てて寒かったら窓を閉めたらいいのではないかしら」
「それは無理。いったん窓を開けて寝たらもう朝起きるまでずっと『寒いよう寒いよう』と思いながらそのまま寝るしかない。開けて寝た窓を閉めようと思ったら起き上がってエンジンスイッチ入れて窓を開け閉めするスイッチを触らんといけんじゃん」
「そりゃあそうよ。登山に備えてぐっすり眠るためにはそれくらいしようよ」
「いいや、無理。いっぺん寝たら無理」
「ええ、じゃあ、この前みたいに暑いなあ、と思っても、寝てる最中に涼しくするために車中をちょっとだけ移動して窓を開けるのも無理ってこと?」
「うん。どっちにして寝るかはもう寝る時点で決めたら朝まで何があってもそのまま」
「どんなに寒くてもどんなに暑くても?」
「うん」
「難儀やねえ。私は寝ている最中でも自分の快適のためなら起きだして冷蔵庫開けて炭酸水出してコップに入れて飲むくらいのことは平気でするから、すぐ手が届く距離の窓の開閉をせずに暑いや寒いのを我慢したまま寝るほうが無理だわ」

 そうだった。そういえば、私達が大阪に住んでいた頃に早朝発生した大きな地震(阪神淡路大震災)のときに、私が揺れる天井と蛍光灯に怯えながら夫に「たいへん、地震」と声をかけてゆすって起こしても彼は起きなかったんだった。何度もしつこく夫をゆする私の肩を引き寄せて彼は寝ぼけたまま「よしよし、だいじょうぶだいじょうぶ、はい、お布団に入って」と促してそのまま眠り続けたんだった。これのどこが大丈夫なんじゃ、と思いながらうずくまっていたことを思い出す。結果的に私達は無事に生存しているけれども、あのときのあの揺れと振動と建物の亀裂音と食器が落ちて壊れる音を「だいじょうぶ」というかどうか。

 昨夜の登山口駐車場の気温と夫の車中睡眠環境設定はうまくいっただろうか。今日は山小屋で快適にひとりひとつのお布団に包まれているだろうか。

 職場の人と話したときに山岳保険の話になり、そういえば私は夫が山岳保険に入ったという話は聞いたけれども、保険証券のようななにか保険請求のときに必要な番号だとか必要な何かを見せてもらったことがないことに気づいた。それで山岳保険の保険請求時に必要なもの一式を出しておいてちょうだいと頼んだら「うん、わかった」と言ったきり夫はなかなかその書類を出さない。「保険の書類は?」ときくと「おれの部屋のどこかにあるはずなんだけどどこにいったか思い出せなくて」と言う。「保険の書類を妻に渡すまでは槍(槍ヶ岳)には行けんのんじゃけんね」と言うとまもなく「あったー。これこれ」と言って書類を持ってくる。

 保険請求時に記入する書類には私ではわからないことがいろいろとあり、これは本人に意識がない状態のときなどは救助に出向いてくれた人たちから教えてもらって書くことになるのかしら、と思う。「遭難発生日」「天候」「遭難場所:山域、山名、場所名、ルート名など」「遭難自己の発生状況:登山中、下山中、渡渉中、山スキー・ボード滑走中、山小屋内、とはん中、ほか」「遭難事故主原因:転倒、滑落、負傷、悪天候、道まよい、落石等、雪崩、発病、ほか」「ビバークの有無:なし、あり(何泊、場所どこにて)」「捜索救援を行った者:本人、同パーティー、付近登山者、山小屋関係者、ほか」などなど私にはほとんどどれも計り知れない内容を書類は延々と問い続ける。

 お山ではいつも元気で無事なのがいちばんいいにきまってるけれど、何かあったときのための備えももちろんたいせつ。     押し葉

二転三転四転五転

 私はインターネット通信販売をよく利用するほうだと思う。お世話になる店舗や配送業者さんは様々だが基本的にはどこもみなさまよくしてくださりたいそう便利で快適だ。

 むかし郵政民営化という出来事があったことをご記憶だろうか。あの改変があったのが何年のことで今から何年前のことなのか記憶は定かではないのだが、その民営化の前だったか後だったかに今はゆうパックと呼ぶ郵便小包や家庭用郵便受けに入らないサイズの大きな定形外郵便物を「置き場所指定配達」してもらえるサービスが始まった。
 例えば配達時に不在だった場合、通常であれば不在連絡票が投函されその連絡票を見て再配達の依頼をするなり自分で受け取りに行くなりの連絡を行うところであるが、せっかく配達に来てくれたのであれば、なま物でも冷蔵冷凍品でも書留でもない配達物は各家庭でセキュリティがしっかりしていると判断した場所を「不在時郵便物置き場所」として指定する、というもの。
 具体的な手続き方法ははっきりと思い出せないが、各家庭に「今度こんなサービス(不在時置き場所指定サービス)が始まります、ぜひご利用ください。ご希望の方はこの書類に必要事項を書き込み送ってください」という案内が届いたように思う。そういうサービスを待ち望んでいた私は「ありがたいことだこと、早速申し込みましょ」と指定の書類に住所氏名電話番号に希望の置き場所とその略図を書いて投函した。ほどなく「こちらがお客様の置き場所指定を示すシールです、郵便配達員に見えやすいところに貼り付けておいてください」という案内とともに一枚のシールが送られてきた。

 シールのデザインそのものは、なるほど郵便局っぽい顔立ちのキャラクターのようなものとその顔を囲む枠が暗号になっており、暗号の枠がこの形ならば宅配ボックスへ、この形ならば玄関前へ、この形ならば車庫へ、この形ならばどこどこ、等々と何種類か設定されているらしい。我が家の場合は「玄関横の扉付きガスメーターボックスの中に置いてください」という指定希望の場所を示すシールが届いた。郵便くん(キャラクターを勝手に命名)の顔がある以外はどこかのおうちの家紋みたいなマークね、と思いながら、配達員さんが見えやすい場所はどこかしら、と思案して、玄関ドアの郵便受け(主には新聞受けとして用いる)の差込口中央の上のドア部分にぴたりと貼り付けた。
 このシールを貼ってからは、仕事から帰ってくるのが遅くても、翌日も朝早く出て夜遅く帰宅しても、常温で問題のない配達物でなおかつ必ず手渡しで受け取りたいような超高額高級品というわけでもないもの、に関しては、「ああ、また今日も受け取れなかった」と感じるストレスから開放された。置き場所指定シールバンザイ。

 このサービスとは別に私はファンケルという通信販売会社の商品にもお世話になることがよくある。ファンケルの配送は以前はペリカン便という名前の今は個人配送業務からは撤退した配送会社が引き受けていた(そのさらに前は郵便局のポストサイズ郵便が主な配送手段として使われていた)。当時ペリカン便(日本通運)とファンケルの協力により、ファンケル商品に関しては「置き場所指定サービス」が早くから開始された。この置き場所指定サービスは在宅不在宅にかかわらず呼び鈴を鳴らすことなく指定の場所に配送物を配達する、というもの。もともとファンケルを利用する顧客の多くは女性で、中には新生児のお世話で多忙な人もいれば、夜勤がある仕事に従事している人もいる。赤子がせっかく寝ついたところを呼び鈴で起こされたくないから指定の場所に配達して「指定場所に置きました」という案内だけ玄関ポストに投函してもらえるとうれしい、だとか、夜勤明けで寝ているときに商品受け取りのために起きだしたくない、起きているとしても寝起きのボサボサの姿で宅配を受けとるのは嫌だから指定の場所に配達して配達完了の旨を知らせてもらえればあとで取りに行くからそうしてほしい、というような要望を受けてのサービス開始だったように記憶している。もちろん商品の種類によっては置き場所指定を受け付けていないものもあり、あくまでもこれならここなら安全で大丈夫、と判断できるものに限る。

 赤子はおらずこれまでのところ夜勤のない仕事に就いている私であってもそのサービスはたいへんにありがたく、盗難トラブルなどのない環境が整っている場合は、受け取る側も運ぶ側も二度手間三度手間がなくてお互い便利なサービスだった。

 それが数年前に、ペリカン便は個人の荷物配送業務から撤退するというか日本郵便と事業統合するということになり、これまで配達担当をしてくださっていた私の居住地担当のペリカン便配達員さんの配達ではなくなることになった。そして日本郵便の配達担当の方が配達してくださることになった。
 ファンケル商品が入った箱にはこれまでどおり「在宅確認不要。指定の置き場所に配達(指定場所どこどこ)」というシールが貼ってあるのだが、日本郵便の配達係の人は呼び鈴を鳴らす。自宅にいるときにはインターホンに出る。「日本郵便のお届け物です」と言われるから出てみるとファンケルからの置き場所指定商品。「ありがとうございます。ファンケルからの荷物は今後ともちょくちょく配達をお願いすることになるかと思うのですが、伝票のこちらに書いてありますように、置き場所指定しておりますので、在宅でも不在でも指定の置き場所に配達してその旨わかるものを玄関ポストに入れておいていただけると助かります」と伝えた。配達担当の人は「はい、わかりました」と言われたのだが、配送会社が変わるということは、ファンケルとしてもどこの配送会社にしようか検討した上でのことなのではあろうが、しばらくは課題があるのだろうなあ、と思いながらその日の受け取りを終えた。

 しばらくしてまたファンケル製品を購入することがあった。仕事から帰宅したら商品の入った箱をビニール袋に入れて口を縛った状態で玄関のドアノブにかけてあるのを見つけた。配送物の伝票には「在宅確認不要。指定置き場所に配達(置き場所はガスメーターボックス)」と書いてあるのだが、そしてガスメーターボックスのほうが厳重な扉がついていて外からは中が見えなくて気温もそれほど高くなくて置き場所として優れているのだが、なぜ指定場所ではない玄関のドアノブに商品がかかっているのかしら。今後のこともあるから一度ファンケルさんに連絡しておきましょうかね、とファンケルに電話でお知らせする。

「いつもお世話になっております。ファンケルさんの置き場所指定サービスのおかげで安心して買い物ができて助かっています。ありがとございます。先日配送業者さんがペリカン便さんから日本郵便さんに変わってからのことなのですが、ファンケルさんがきちんと『在宅確認不要。指定置き場所に配達』のシールを貼ってくださっているにもかかわらず、呼び鈴で在宅確認され手渡しでの受け取りになったりですとか、こちらが安全性を考慮して指定している場所ではなく配送物をビニール袋に入れて玄関ノブにかけてあったり、ということがありました。我が家の場合は玄関ノブは他の人からも目につきやすい位置にありますし西陽もあたりますので、商品を置いてもらうには場所として適していないのです。配送業者さんの変更でファンケルさんも何かとたいへんなこととは思いますが、どうか、せっかくの置き場所指定というこれまでの素晴らしいサービスも込みで引き続きファンケル製品を愛用したいと思いますので、可能な範囲で配達業者さんへの連絡をしていただけるとありがたく思います」

 そのときのファンケル電話窓口担当の方はもうその手の電話を大量に受けていたのだろう。私の話の最初から「やはりですか、そうですか、またですか」という合いの手が何度も入る。そして配送業者変更に伴う各種不都合に対するお詫びと今後間違いなくこれまで通りかこれまで以上の配送サービスで商品をお届けできるように連絡を徹底してまいります、という返答をくださった。
 その後ファンケルの荷物に関しては、在宅確認不要指定置き場所に配達のシールと文字が大きくなり、よほどたまたま玄関先で配達員さんに遭遇した場合以外は、そっと指定場所に丁寧に荷物を置いて「何月何日何時に配達に来て指定場所に置きました」の紙を入れてくださるようになった。

 そんなに便利な置き場所指定配達だから、可能であるなら他の業者さんにも同じサービスをお願いしたいと思ってお願いしてみたことがある。ヤマト運輸さんと佐川急便さんそれぞれの窓口に電話したのだったかメールしたのだったかこれまた今となっては思い出せない昔の話ではあるが、結論を言うとヤマトさんと佐川さんは「盗難防止の安全性を鑑みて鍵付き宅配ボックス以外の置き場所指定には対応しないことにしている」という回答をもらった。「冷蔵や冷凍やナマモノではなく常温の安価なものであってもダメでしょうか、ペリカン便さんや日本郵便さんには対応いただいているのですが」と食い下がってみたがたいへん丁寧な口調で「ならぬものはならぬ」「荷物の安全のためにもご理解とご協力をお願いしたい」とお応えくださった。そういう主義主張であるということならばそれはそれで私も理解協力するよと私もそのつもりになった。

 当時の佐川急便の電話窓口担当者さんは「当社は置き場所指定はできませんが、当社の配達時間指定は他社に比べて幅があるので、たとえばご帰宅が20時過ぎなのに配達希望時間帯指定が19時から21時しか選びようがなくて不便だというような場合には、送り主様に19時から21時の指定をしてもらった上で伝票に「20時以降在宅、20時以降配達希望」と記載していただければ対応するようにいたしますし、もしも送り主様でのそういう対応が難しい場合にはお手数ですがお客様からその都度こちらにお電話いただいてどこからのどの荷物の配達の時間指定が何時から何時だが在宅は何時以降だとご連絡いただければこちらからドライバーに連絡して可能であればその時間帯の配達にすることができます、事前に伝票番号がわかった状態でご連絡いただければなお対応しやすくなります。ただしお中元やお歳暮の季節などで配送が混み合っている場合はご希望に添えないこともあるかとは思うのですが、置き場所指定はできないかわりにこういったサービスをご利用いただければと思います」と案内してくださった。

 置き場所指定に対応している配送会社で配送される通信販売会社の商品についてはその通販会社に配送伝票に置き場所指定希望の旨を記載してもらえないだろうか、と相談してみたこともある。では毎回備考欄にその旨書いてご注文くださればそのようにいたしましょう、というところもあれば、うちは手渡し以外はいたしません、たとえ不在時置き場所指定登録をされているお客様であっても、当社の商品に関しては手渡し以外厳禁のシールを貼らせていただいております、商品を確実にお届けするためご理解ご協力くださいと案内されたこともある。しかし「うちは手渡し以外はいたしません」のところから届いた荷物を開けてみたら、箱の送り状の宛先はたしかに私の住所と名前なのだが、そして中身の商品はたしかに私が注文した種類と数量なのだが、納品伝票に書いてある住所と名前が私とは別人の他の都道府県にお住まいの人のものだったことがある。本当はこの商品はその別の人の注文品なのではないか、その人と私がたまたま同じ内容の商品を同じ数ずつ注文して納品伝票だけ入れ違いに入ったのではないか。その会社にはすみやかに連絡して商品をどうしたらよいか(そのまま私のものとして使用開始してください)、他の方の住所と名前電話番号が書かれている納品伝票は同封の封筒に入れて御社に送り返してよいか(ぜひそうしてください)、今回の私の納品伝票は別途郵送していただけますか(もちろんそのようにいたしいます)、という連絡を取り合った。
 
 話をもともとの日本郵便置き場所指定サービスに戻すのだが、その置き場所指定暗号シールが貼ってあるにもかかわらず、ここ数年、ファンケル製品以外のゆうパック等大きめの郵便物に関して「不在連絡票」が入ることが多くなってきた。生活や健康や気持ちに余裕があり再配達希望の連絡や受け取りが苦にならないときには問題ないのだが、暮らしの状況によっては「いや、だからここに不在時置き場所指定のシールが貼ってあるんだから、指定の置き場所に置いておいてさえもらえれば、再配達依頼も受け取り時間の調整もしなくてすむのに、なぜ」という思いになることがある。

 半年近く前だろうか、郵便配達員さんが書留か手渡しの何かの配達に来られた時に、在宅していた私が受け取った。配達員さんが「すみません。ここに貼ってある郵便のマークのシールですが、これは置き場所指定のシールだったかと思うのですが、この枠の形はどこを指定する意味のものだったでしょうか」と私に問われた。「うちはガスメーターボックスなんです、不在時にはお手数おかけしますが、よろしくお願いいたします」とお願いした。「ああ、そうでしたか、わかりました」と言われ、その後数度置き場所指定のものを置いてもらった。そのときのやりとりを夫に話したところ夫は「郵便局員すらも自分のところが発行したシールの暗号の意味がわからないくらいのほうがセキュリティ的意味合いでは安心といえば安心なんやろうな」と言う。でもそれで本来のサービスが提供享受できないというのはいかがなものなのだろうか。

 今年の夏と秋になってにわかに日本郵便配送の荷物を頻繁に受け取る機会が増えた。もともとの発送はアメリカの日通(旧ペリカン便でもある)なのだが、国際配送の過程は日通が担当し、国内に入ってからの配送を日本郵便に引き継ぐという形だ。日通の国際お荷物追跡画面はなにやらかっこよく、「ロサンジェルス空港にて機内に搭載しました」「ロサンジェルス空港を離陸しました」「成田空港に着陸しました」「成田空港税関を通過しました」「国内配送を開始しました」という案内を閲覧できる。その後は日本郵便のお荷物検索システム画面に引き継がれる。

 荷物の中身は常温保存で数年以上保存できるものばかりである。国内配送物とは異なり、現地の休日やフライトスケジュールの兼ね合いもあり、ネット注文時に配達希望日時の指定をする欄はない。早ければ早く着くけれど遅ければ二週間前後かかることもあるからそのつもりで注文してね、という案内があるから、はいはいわかりましたよ、とそのつもりで注文する。

 先日またそのアメリカのお店に注文した。前回は発送までにちょっと時間がかかったのは現地の連休の時期だったからなのね、と、思いの外早く発送してもらえたことを喜び、日通の荷物検索サイトを見ては「おお、もう成田を出発したのかー、じゃあ明日か明後日にはうちに着くかな。不在でも指定の置き場所に置いてもらえるから受け取りのために帰らなくちゃと思わなくていいし夫に受け取ってねと頼まなくてもいいし気楽で安心だな」と思いながら仕事に励む。

 9月27日の19時前に帰宅したら、18時41分に配達に来たけれど不在だったので持ち帰った、再配達を希望するか窓口で受け取るか連絡してきてくださいの「不在連絡票」があった。あらら、これは置き場所指定荷物だから持ち帰りではなく指定の場所にあるはず、と、念のためガスメーターボックスを開けて中を見るが、ない。
 不在連絡票には荷物の追跡番号と24時間自動受付電話番号とインターネットによる受付先と郵便またはFAXによる受付方法と窓口受け取りの案内とその他問い合わせ電話連絡先とが書いてある。一応欄としては「ドライバー直通携帯電話(20時まで「ご希望の配達時間帯をご連絡ください。責任を持ってお届けします」※運転中等のため電話に出られない場合があります)という部分もあるのだが、そこには何も書かれていない。

 ただ単に再配達を希望するのであれば、プッシュホンの自動受付を使えばいいことなのだが、本来置き場所指定の荷物が指定の置き場所に置かれず持ち帰られたことを伝えて今後の配送に反映してもらいたいと思うから、できれば十数分前に配達に来てくださった担当の方に直接お話できればそうしたい。しかし連絡先不明ではそれはできない。この時間帯にドライバーさんの携帯電話に電話するとヤマト運輸さんや佐川急便さんはほとんどの場合「このあとずっとご在宅ですか。では後ほど再配達に伺います」と言われる。ごくまれに「すみません、今日はもうどうしてもそちらの方面に回る時間がないので明日以降での配達にさせてもらってもいいですか」という相談を受けることもある。それはそれでその都度快く相談させてもらっている。

 どうしようかなとしばらく考えて、電話問い合わせ先に電話をかける。現在居住区の中央郵便局だから夜間でも対応してもらえる、とはいっても電話問い合わせは朝の8時から夜21時までの間だが。他の対応で多忙なのか、呼出音はなるもののなかなか出ない。何度目かにかけた何十回か目の呼び出し音で係の人が出てこられた。不在連絡票をもらったことと置き場所指定登録をしてあるので本来ならばそこに置いてもらえるはずであることと再配達を希望することと再配達時に不在の場合は指定の登録置き場所に置いてもらいたいことを伝える。

 電話対応の方は荷物追跡番号と配達日時と荷物の種類番号を確認される。荷物の種類は「生もの」「保冷(チルド・冷凍)」「代金引き換え・コレクト」「料金着払い」「上記以外」で私の荷物は上記以外。電話の方は「そのお荷物は持ち帰る必要のないものですからご登録の指定置き場所に置いてその旨ご連絡するべきものでした、申し訳ございません。再配達は明日以降でのお届けとなりますが何時をご希望されますか」と言われる。「何時でもかまわないのですが、不在であれば必ず指定の置き場所に置いていただけますよう配達担当の方にお伝えいただければ」と言うと「では一番早い明日の午前再配達ということで承ります。ご不在の場合は指定の置き場所に置かせてもらいます」とのこと。

 その荷物に関しては翌日午前中に手渡しで配達されたのだが、前日の夜に自宅の玄関ポストを見て、たしかにこの置き場所指定シールはもう何年も経過してすっかり色があせていてぱっと見た目なんのシールだかわからないといえばそうかもしれない。そうだよね、郵政民営化がどうこう言っていた頃のシールだから劣化して当然、これはいつ配達員さんが来て見てもここにシールが貼ってあることとその絵がはっきりと見えることが大切だわ。今のシールでは配達の人が見落としても仕方ない状態だもの。暗い時間帯ならなおのこと見えないに違いない。これは新しいシールをもらって貼り直すことにしましょう、と考える。明日配達の人が来てくれた時に新しいシールをくださいとお願いしよう。私がいれば直接言うけれどいない時に備えてお願いのメモを玄関に貼っておこう。「郵便局様 いつも配達ありがとうございます。置き場所指定シールが色あせてきましたので新しいシールをわけてください」

 翌日荷物を運んできてくださった担当の方から直接荷物を受け取る。担当の人は私が書いて玄関に貼っておいたメモを手に取り「置き場所指定のシールですね、わかりました、次回近日中にお持ちいたします」と言って帰られた。「メモ持って行かれますか」と確認したが「いえ、いいです、シールは持ってきますので」とのことだった。

 ところがそれからしばらくして今月に入ってもシールは届かない。まあ、何かのついでの折にということならそれでもいいのだけど、と思っていたら、その何かのついでの折があり別のところからの配達物が届いたのだがシールは持ってきておられず、「あの、置き場所指定のシールは」と問うと「え、なんのことでしょう」という対応。ああ、先日の配達員さんとは別の人だから連絡がいっていないのね、あのときのあの配達員さんがこの地域の配達に回るときでなおかつ我が家宛の荷物があるときまで新しいシールは手に入らないということなのかしら。

 そんなこんなで過ごして今日カイロプラクティクに行った。先週から吐き気が続いていて、最初はあら何かへんなものを食べたかしらというような感覚で胃腸の調子がよくないのかと考え胃腸薬で対応し、それでも食道が本来下方に飲食物を流動するはずが上方にむけて蠕動運動しているような、私は反芻する動物ではないのに胃の中の食べ物が食道から喉に戻ってくるような、でも吐ければラクになるのに吐けるわけでもなく吐き気が続いていた。手持ちの胃腸薬と吐き気止めで様子を見る。

 それがだんだんとあれもしかして私肩甲骨まわりが痛いかもと思うようになり夫に湿布を貼ってもらう。翌日にはなんだか肩の筋肉も痛いしおかしな形に盛り上がっているわと気付きそこにも湿布を貼る。そうして吐き気止めを飲み仕事をしていたのだが、吐き気止めが効いている間はそれほど吐き気はないものの、吐き気止め服用後4時間から5時間経つと食道が上方へ何かを押し出そうとする。知らず知らずのうちに「うう」と声がもれる私に同僚が「気持ちわるいんか」と聞いてくる。「ああ、すみません、たぶん何も出てこないと思うんですが、もし職場の薬に私のゲロがかかったらごめんなさい」と言うと同僚は「いやー、それはいやー。万が一急ぎでその場で吐くとしても高い薬じゃなくて安い薬を選んでー。でもその前にがんばってトイレまで行ってー」と言う。「はい。がんばる」と応える。同僚は「吐き気がして背中肩首腕周辺に痛みと違和感があるってなんかむっちゃ怖いんやけど。患者さんがそんなん言うたら『整形外科か脳神経外科ですぐに診てもらいね』って言うわ」と言う。「ほんまですね、私も患者さんからそんな話聞いたら怖いかも。なんか左手の先までしびれてきてるし眼球の奥にも違和感あるんですよねえ。そういえば肩甲骨と肩だけでなく首もへんなんですけど首というか頭部が左側に回らない。上を向いて高いところの薬を取ろうとすると痛くて嗚咽が出るし吐き気がするし、なんか怪しいかも」と応える。
 
 患者さん宅に薬の配達に行く時にも「今日は私左後方確認をするバックができないのでひたすら前進で運転してきます」と宣言してから出発した。そして仕事が終わる頃になって、待てよ、これは胃腸や食道の問題ではなくて骨格筋肉の問題なのではないか、以前首の捻挫をしたときにもこういうかんじの吐き気がしていたではないか、と思い至る。そして即効でカイロプラクティクに予約の電話をかける。残念ながらその時点では既にその日は予約が取れず翌日の今日の予約となったが、そうとわかれば使う薬が違ってくる。使うべきは胃腸薬と吐き気止めではなくて、ここは消炎鎮痛剤と筋緊張をほぐす薬だー。

 帰宅して空腹のまま近所のクリニックに特定健診を受けに行き、その近くのおいしいパン屋さんでドライフルーツたっぷりのハード系のパンを買って帰る。それらをもぎゅもぎゅと食べてからロキソニンとデパス(のジェネリック)を服用する。数十分で「これよ、これ。これだったのよ」という効果実感が現れる。おかしな形に盛り上がっていた肩の筋肉がうにょんうにょんと自力で本来の形に戻ろうとする動きが感じられる。吐き気が引いていく。ああ、筋緊張性の吐き気だったのね、ありがとうエチゾラム、ありがとうロキソプロフェンナトリウム、とそれぞれの薬の成分名をつぶやいて感謝を捧げる。

 そして今日カイロに行って施術を受けたらもうすっきり。もちろん一度歪んだものが戻るには時間がかかるしもともとの歪み癖のようなものもあるからしばらくメンテナンス強化月間にはするつもりだけど、体がしてほしい方向のことをしてやれるところに至れたから、体も私もらくだわー。せっかくこのカイロ屋さんまで来たことだし、お向かいの中央郵便局にも立ち寄って、未だ持って来てもらえない日本郵便の置き場所指定シールをもらって帰りましょう、と決める。

 ゆうちょ銀行の窓口を通り過ぎてから郵便の窓口で「郵便物の置き場所指定シールが色あせて見えにくくなりましたので、新しいシールをください」と頼む。窓口の人たちは「置き場所指定シール」と聞いてもなんのことだかピンとこないようで後方にいる少しベテラン風の人に確認してから「いったん外に出ていただいて左に曲がったところにある窓口のほうでお渡ししていますので」と案内してくれる。「時間外受付窓口のことでしょうか」と確認すると「はい、そうです、お願いします」とのこと。
 
 時間外受付窓口には休日や夜間にお世話になったことがあるから勝手知ったる場所。時間外受付窓口の担当者の人に「うちの玄関に貼ってある郵便小包などの置き場所指定シールが色あせて見えにくくなっているので新しいシールをください」と伝える。その担当の人は「お荷物の時間指定ですか」と問い返されるので「いえいえ。配達時に不在の場合に事前に登録した指定の置き場所に配達物を置いてもらうための置き場所指定シールです」と説明する。その方はしばらく窓口周辺の引き出しをすべてあけて探してくださったのちに先輩らしい人たちに聞く。先輩たちが「それは上の階が保管している」と言うのを聞き担当者さんは上の階に行く。しばらくするとその人が来て「まもなく持って参りますので、しばらくそちらにかけてお待ちください」と椅子を手のひらで案内される。はいと座って日本郵便のいろんなサービスに関する案内の紙を眺める。

 担当者の人が先ほどの先輩と「上にもないらしいんですが」と相談を始める。先輩風の人は「上にもないここにもない、はてさてどうしましょう」と考えてから「どうなっているのかちょっと確認してみよう」と一緒にどこかに行く。
 しばらくして先ほどの先輩風の人が窓口に現れて「シールはいったんお渡ししているはずのものなので再度お渡しはしないことになっております」と案内してくださる。

「そうですか。しかしながらなのですが、ずっと以前最初に置き場所指定サービスを申し込んでもう8年前後経つでしょうか、経年劣化でたいへんにシールが色あせておりまして、郵便配達員さんですらそのシールの存在に気付かれなかったり、シールの意味がわからなかったり、ということがありまして、本来ならば指定の置き場所に置いてあるはずの荷物を持ち帰られまして不在連絡票が入っていて再配達依頼しなくてはならない、ということが何度かあるのです」
「そうですか、それは、すみません」
「新しいシールをいただく方法はないのでしょうか」
「以前はお客様に申し込みいただいてシールをお送りしたものをご自分で貼っていただく、という形だったのですが、現在はお申込みいただいたお客様のご自宅に係の者がシールを持って伺いまして、その場でお客様の立会のもと双方がわかりやすいところにシールを貼るという形になっているんです。ですので、その申込書を書いて送っていただければ」
「それでしたら今すぐこの場で書きます。一点確認なのですが、それで現在の登録内容がなくなって新しいシールを貼っていただけるまで置き場所指定サービスが使えない状態ということになったりしますか」
「いえ、それはないです。既にお客様の場合は登録がありますので、それはそのままで、新しいシールをお出しするために便宜的に新しい申込書を書いていただくというだけですから」

 別の担当者の人が「こちらの紙ですね」と往復はがき方式になった置き場所指定サービス申込書を手渡してくださる。送り状などを書くテーブルの上には別のお客さんが大きな荷物をいっぱいに広げていて書く場所がないから窓口の隅っこで書くことにする。自分のペンをバッグから出してもいいのだけど、ここはサービスとしてはペンも一緒に出してくれるとスマートだよね、と思いながら「ペンを」と言うと「え?」と問い返される。「今いただいた申込書を書きたいのですがあちらのテーブルでは書く場所がないのでこちらで書きたいと思います。つきましてはペンを貸していただけますでしょうか」と言うと「ああ、はい」と胸ポケットからペンを出して貸してくれる。
 郵便物受取人名、住所、氏名、電話番号を記入する。説明書の部分を読むと、この申込をしても生ものや冷凍冷蔵品や着払い品や書留などは置き場所指定の場所に置きませんよ、等々了解した上で申込書に記入押印してください、という趣旨のことが書いてある。バッグには常に認め印を入れて持ち歩いているから押印だってすぐにできるわよ、と押印場所を探すが申込書にそれらしい場所がない。

「すみません、記入押印するように説明が書いてあるのですが、どこに押印するといいのでしょう」
「いえ、印鑑はいらないですよ」
「でもですね、こちらの説明文のここに押印するよう書いてあるのです」
「んん、本当ですねえ、でも印鑑押す場所ないですねえ、あえて押すとすればお名前の後ろあたりでしょうか。でもいいです、印鑑なくて」
「そうですか、では、このままお渡しします」
「では、後日係の者が伺いますので」
「いえ、後日ではなく本日このあと何時でも配達業務の時間内であればいつでも構いませんので、今日中にシールを持ってきて一緒に貼っていただくわけにはいきませんか。今日は仕事が休みでうちにいることができますが、明日以降はまた仕事でなかなか家にいる時間を調整するのが難しいので」
「そうですか。本日中に伺えるかどうかわかりませんが、配達部門の者に伝えまして、そちらからお客さまのこのお電話番号に電話をかけるようにいたします。そこであらためていつ頃伺うようにするか相談していただけますか」
「はあ、そうですか。わかりました。では帰宅してお電話お待ちしております。よろしくお願いいたします」

 それにしてもここまでの流れにおいて、まず郵便局の表の一般受付窓口での「外の別の時間外窓口に行って」にしても、「座って待ってて」にしても、要はスタッフの大半が自社がこれまで行ってきた「置き場所指定サービス」について詳しく把握していないどころかほぼその存在を知らない、ということなのだろうか。サービス開始時にはあんなに、なんというか「鳴り物入り」で「さあさあみんな利用して」という勢いのある案内だったのに、今回書いた申込書は黒色文字のみの地味な往復はがきで、「配達時に不在の多いお客様からどうしてもそうしてもらいたい、という要望があるから一応対応はしてるけど、あんまり申し込んでほしくはないなあ」な雰囲気が漂っていた。
 鳴り物入り、といえば、かつて電話回線を選んで契約する「マイライン」というサービスが展開されたことがあったが、そして私はたいそう熱心に電話会社各社のサービスと料金を比較して細かく分けて登録契約し、「マイラインってなーにー、放っておいて全部NTTにするのと何が違うのー」と言う同僚にレクチャーしたこともあったのに、あのサービス、いつのまにか消滅したなあ。

 帰宅して、ああ、そういえば、私、スーパーに生姜を買いに行きたかったんだわ、でも郵便局から電話がかかってくるまで待っていたほうがいいかもなあ、せっかくだからシーツと枕カバーの洗濯もして干したいし。その間にかかってこなければいったん生姜を買いに出かけて、その間に留守電なり着信履歴があればこちらからまたかけてもいいしね、と思いつつ洗濯。生姜はこんにゃくと牛すじを煮込んだところに具として入れて食べたいなと思っての生姜。牛すじとこんにゃくを買ったときに生姜のことを思い出さなかったけどあきらめきれないから週に一度の買い出し日と決めている日曜日以外にスーパーに行こうと思うほどの生姜欲。

 洗濯物が仕上がるまでの間に電話がなる。郵便局からだ。

「さきほど窓口で置き場所指定サービスの申込書を書いていただいた件なのですが」
「はい、先程はお世話になりました、ありがとうございました」
「実はその後確認いたしましたところ、現在は置き場所指定のシールは、盗難などのトラブル防止の観点から、誰もが見ようと思えば見える場所に貼るのはやめようということになりまして、シールを貼るということ自体をしなくなったんです」
「はあ、そうなんですか」
「しかし置き場所指定サービスそのものは変わらず行っておりまして、シールなしでもお客さまが登録申し込みされた指定場所に不在時には配達して連絡表を入れる、という形となっております」
「あの、これまでシールが貼ってあるにもかかわらず不在時に指定の置き場所に置いていただけなくてお持ち帰りくださるために再配達依頼の連絡をしなくてはならないということがあったからこそ、今回こうして新しいシールを、どの配達員さんが見ても間違いなくこの家は置き場所指定のところだと判断してもらいやすいようにと思いましてお願いしたりそちらに伺って申込書を書いたりしたのですけれど、シールがあっても置き場所指定サービスが受けられないことがあるのに、シールなしでも配達員の方たちの連絡確認は徹底されるということなのでしょうか」
「はい。本来置き場所指定の場所に置いて連絡票を入れるべきところをそうしなかったのは誠に申し訳ございませんでした。今回あらためてお申込みいただきましたので、今後はご不在の場合は確実にご希望の指定置き場所に配達しまして連絡票を入れるようにいたしますので」
「そういうことでしたら、よろしくお願いいたします。しかし、シールが貼ってあることがそんなに危険なことであるならば、現在うちの玄関に貼ってあるシールも剥がしたほうがいいのでしょうか」
「そうですねえ、お手数かとは思いますが、そのようにしていただけましたら」

 今日は郵便配達の人が新しいシールを持ってきて貼ってくれるからと思ったから、少し前に玄関ドアのシールとその周りをきれいに拭き掃除して新しいシールを貼りやすいようにしておいたのだけど、玄関ドアがきれいになるのはシールとは関係なく佳きことなのだけど、郵便局で別の窓口に案内されたことや、新しいシールを持ってくるから座って待てと言われ座ったことや、新しい申込書を書いたことや、いつシールを持って行って貼るかあとから電話で相談してね、と言われて帰ったあの一連のいきさつはいったいなんだったんだろう。
 
 置き場所指定サービスを希望している家の情報はなにか配達員さんが持つ端末に入れてあるのだろうか。あるいは配達員さん全員が「置き場所指定サービス申込者一覧とその指定置き場所リスト」を携帯しているのだろうか。

 日本郵便のサービスにおいて置き場所指定サービスがマイナーなサービスであることはわかった。マイナーながらも消滅していないこともわかった。そして目につくところに置き場所指定シールが貼ってあるのは危険らしいが郵便局員が各家庭に赴き登録顧客に事情を話しかつて配布して貼ってあるそのシールを剥がして回っているわけではないようだ。

 夜帰宅した夫に「今日はね、いいネタがあるのよ」と上記内容を報告する。夫は「おれは全然驚かんけどな。いかにも郵便局にありそうな展開じゃん」と言う。

「たしかにね。さっすが郵便局、というかんじではあるでしょ。でも私の今日までの労力はともかくとしてネタとしては悪くないと思うんだけど。吐き気もおさまったし、久しぶりに食べ物食べておいしくて、気持ち悪くなく文章が書けるからみそ文に書いてるところなの」
「でもオチが、シールはないけどこれからはちゃんとするからね、だったんじゃろ。そんなんオチとしてはもうひとつやなあ。どうせなら、置き場所指定サービス、そんなんもうしてません、というかそもそもそんなものなかったですよ、お客さんなんのこと言うてはりますの、くらい言うてくれんと。それにその郵便局の置き場所指定サービスの存在を知らない人のほうが世の中大半なのに、おれはみそきちがそのサービス使ってるから、それなのに置き場所に置いてなかったいう話も聞いているから、そういうサービスがあるって知ってるけど、世の中の大半の人はまあたぶん知らんな」
「そんなことないよ。ファンケルユーザーならその何割かは知っているはず」
「なんで」
「だって、ファンケルはもともとファンケル独自で置き場所指定サービスしてたもん、当時はペリカン便だったけど。ペリカン便さんいい仕事してくれてはってねえ。それがペリカン便が日本郵便と統合されてからは一時期トンチンカンなことが多くて、でもファンケルさんもよく頑張って郵便局の人が本来の指定置き場所に配達できるようになるまでいろいろ工夫や協議をしてくださってねえ、ファンケル商品に関しては問題なくなったんだけど、それ以外の日本郵便オリジナルの置き場所指定サービスがねえ」
「そんなマイナーなあるかないかわからんような郵便サービスのどうこうをブログに書いても読んだ人なんにもわからんのんじゃないかなあ」
「ふふん、私の書くものは読み手の人のために書くんじゃないの。私の満足のために書くの。今回のは特にくどくて長いから、それだけでもう誰もここまでついてこれやしないと思うけど、たまに読みきってツボにハマってくれる人がいることもあるのが興味深いところでね、それは思いがけない大きなうれしいおまけみたいなもので、ただ書いて自分の、なんだろう、この徒労感のようなものを昇華する作業として私にとっては有効な手段なの」
「よかったね」

 吐き気なくおいしくご飯を食べられて、うがいをするのに顔を上に向けても首がもうそんなに痛くなくて、文章書いても数行で「うう、気持ちわる」とPC前から撤退することなくキーボードで文章を綴ることができるって、快適ですてき。     押し葉

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どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

ときどき、思い出したように、いただいたメッセージへのお礼やお返事をリンク先の「みそ語り」に書いています。よろしければ、いつでも、どうぞ、どなたでも、ご覧ください。「みそ語り」では、メッセージをくださった方のお名前は書いておりませんので、内容から、これは自分宛かしら、と推理推察しながら読んでいただければうれしいです。手の形の拍手ボタンからメッセージをくださる場合は五百文字以内、文字の方の押し葉ボタンからメッセージをくださる場合は千文字以内となっております。文字数制限なくお便りくださる場合には、下のメールフォームをご利用ください。

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