みそ文

アスパラくんのピンバッジ

四月末から五月初旬にかけて旅をしたときに、新潟県新発田市(しばたし)で、「食のアスパラ横町、味めぐり」スタンプラリーに参加した(みそ記「アスパラ押し寿司」参照)。

今日、仕事から帰宅したら、その新発田市から郵便物が届いていた。夫宛と私宛と、同じ封筒が二つ届いている。「わあ。何か当たったのかな」と言いながら開封する私に対して、夫は「はずれましたよ、のお知らせなんちゃう?」と慎重だ。

どうやらみそ様
「食のアスパラ横町、味めぐり」スタンプラリー抽選結果について
この度は「食のアスパラ横町、味めぐり」スタンプラリーに参加をいただき誠にありがとうございました。
さて、二ヶ月間に及ぶアスパラキャンペーンも終了し、皆様から応募いただきましたスタンプラリーの抽選会を実施した結果、貴方様は、「お楽しみ賞」に当選されましたのでお知らせいたします。商品を同封いたしますのでお受取りください。
アスパラくんピンバッジも併せて進呈いたします。
今後も当市の様々な事業に参加をいただき、一層の賑わいづくりにご協力賜わりますようお願い申し上げ、抽選結果のお知らせとさせていただきます。

夫にも同じ内容の文書と、お楽しみ賞のサービス券と、ピンバッジが入っている。サービス券は、別々のお店で使用可能なもので、一枚はあるお店で二百円券として、もう一枚はジェラートシングル交換券として使える。使用期限は、平成二十二年九月三十日。地元や近隣の人たちにとっては、十分余裕のある期間かもしれないが、あと二カ月のうちに私たちが、再び新発田市を訪れるとは思えないことを考えると、なかなか厳しい期限設定だ。

ピンバッジは、アスパラガスの形をした二センチちょっとくらいの大きさのもので、アスパラくんが元気よく、片手を腰に当て、片手を挙げている。胴体部分には、シートベルトだろうかと思うような斜めのタスキをかけている。アスパラ好きとしては、ふむふむかわいいかも、と思う作りではあるものの、私たちのファッションのどこにピンバッジを使う部分があるだろうかと考えてみても、容易には思いつかない。

夫は「二人とも当たったってことは、それだけ応募者が少なかったっていうことやろうなあ」と言う。そうかなあ、と話しながら、夕食のゴーヤチャンプルーを食べる。夫がゴーヤのあく抜き作業をしてくれたときに、塩と砂糖を間違えたせいか(間違えた後で気が付いて、砂糖を洗い流して、塩であく抜きし直していた)、ゴーヤがいつになく柔らかいけれど、苦味がしっかりと私好みに残っていておいしい。

食後になってからようやく、「あ、そうだ。ピンバッジ。洋服につけるところは思いつかないけど、私が携帯している薬入れのポーチにつけたらどうだろう」と思いつく。夫は「ええんちゃう? おれの分もどうぞ」と、親切なようで他人事風な反応。「どうやらくんの通勤鞄にもつけたらいいじゃん」と言ってみても、夫は「いいや、いい」と言う。それなら、私がもらうよ。いいもんね、最近携帯薬入れポーチを、外用と内用の二つに分けたところだから、二つともちゃんと使えるもんね。

当初狙っっていた「アスパラくん賞」が当たらなかったのは残念だけど、今年の初夏もアスパラガスとの愛を深く確かめ合い、その頃の愛をこうやってピンバッジを見るたびに思い出せるようにまでなって、めでたし、めでたしだ。     押し葉

たいへん合戦開催地

誰かが「自分はこんなにたいへんだ」という意味の話をするときには、ただ話を聞いて共感してできればついでに少しねぎらってくれたら気持ちの発露が完了するからそれに協力してほしいのだ、という場合がおそらく多い。けれども、本人の表層的には発露だけのつもりでいても、実は、潜在的な心身の力としては適切な知恵や工夫や行動で問題を解決してゆく方向での対応を求めていることもある。

そこを絶妙に見極めて(感知して)、自分の立場をわきまえた範囲内において、都度都度対応することが、自分の仕事であり役割であることを、わたしは知っている。だから、できるときにはそうして、できないときにはできるようになるつもりでこつこつと練習と精進を重ね、その精進と練習に必要な体力気力を毎日気長に根気よく整える。

誰かが「自分はこんなにたいへんなのだ」という意味の話をしたときに、もっとも適切でない対応は、「そんなこというなら自分だってこんなことがもっとこんなにたいへんだ」というような、「たいへん合戦」を始めることだろう。そこでいきなり勝負に挑んでどうするのだ。

いや、しかし、もしかすると、私が気づいていないだけで、「自分はこんなにたいへんなのだ」と言い募っている人たちの何割かや、あるいはその人のこころのうちの何割かでは、実は、「ヘイ、カモーン、ベイビー、たいへん合戦しようぜ。ゲームを楽しもうぜ」と積極的に誘ってきているのだろうか。闘争心を満たしたくて、勝負欲を満足させてやるために、たいへん合戦開催のゴングを鳴らしてゲームの開催をしたくて、自分のたいへんさを表出している場合が実はあるのだろうか。だとしても、おつきあいはできないけれど、それならそれで対応の仕方は多少変わってくるかもしれない。具体的にどんな対応かというと、たいへん合戦の戦闘能力に恵まれた人材を紹介するなど、だろうか。だとしたら、人材を見極める眼を、私は今以上に意識して養わねばならない。たいへん合戦を得意としたり、たいへん合戦に向いている、血気盛んなタイプの人とのおつきあいは制限してきたおかげで、自分の知り合いの中にすぐにそういう人材を見出せない。しかし、必要とあらば、発掘することは可能であろう。ただし、それが、本当に必要かどうかを、まずは自分によく問うてみたい。     押し葉

妖怪うらおもて

我が家には最近、「妖怪うらおもて」が生息しているらしく、夫も私もちょくちょく、自宅でTシャツをうらおもてに着ていることがある。夫にいたっては、うらおもてだけでなく、「妖怪うしろまえ」にもとりつかれているらしく、裏表のTシャツをさらに後ろ前に着ていたりする。その結果ふたりとも、妖怪に対する警戒心が強くなりすぎて、ちゃんと着ているときにも、裏表のような後ろ前のような着心地に落ち着かなく惑わされる。

自分で気づいて着直したり、互いに気づいて注意したりしつつ、「この調子で、いいかんじで、じいさんばあさんになっていったら、自分もお互いも、うしろまえにも裏表にも、気付かなくなるのかもねえ」「妖怪の天下だなあ」とのんびりと語り合う盛夏。     押し葉

厳しいキティの家庭教育

虫よけ薬や虫さされ治療用塗り薬たちが年内で最も活躍するこの季節。本日ご来店の女性のお客様は、「虫さされのかゆみ治療用で」「ステロイドの入っていないもので」「部活の遠征に携帯しやすい小型の液体」という条件でご相談くださった。お客様の条件を満たす商品を一通りご紹介してみる。

「あ、そういえば、キンカンもステロイドの入っていない液体です。携帯するにはちょっと重いかもですが」
「キンカンは常備薬としていつもうちにあるんで、今回はそれ以外のものをためしてみたいなあ、と思ってるんです」
「それでしたら、ウナですかねえ。携帯しやすさ重視ということであれば、やや割高感はありますが、こちらのプチウナやポケムヒは小さくて軽くて持ち歩きがラクです」
「あ。これ、いいですねえ」
「プチウナは、中の成分は同じで、容器がブルーのとピンクのとあるんですよ」
「うーん。ブルー、か、なあ」
「ポケムヒでしたら、無難なデザインの濃いめの青色容器か、キティデザインのものかの二種類で、こちらも中身は両方とも同じです(キティとは、サンリオのキャラクターのひとつで、フルネームはハローキティ。猫を模した形態をしており、どちらかというと主に女児や少女や女性たちからの人気と支持が高いようだが実態は不明)」
「ああ、これは。キティのにします。うちの子、男の子なんで」
「えーと、キティがお好きな息子さんなんですか?」
「いいえ。興味ないと思います。でも、体育会系部活の男子たるもの、この手のボケツッコミくらいはお約束としてちゃんとできる子に育ってほしいので、これで練習してもらいます」
「うう。厳しい家庭教育なんですね」
「もちろんです。家でしっかり練習して、部活の仲間や遠征先の対戦相手からのツッコミにも、ちゃんとボケた返しをできるようになってくれるといいんですけどねえ。これにします。相談してよかった。こんなに目の前にあるのに、キティの容器の存在に全然気づいてなかったです。ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございます」

キティデザインのお薬に、こういうご家庭での事情や教育方針を背景とした需要があるということに、今まで気づきもしなかったけど、今後の接客の参考にメモしておこう。今回の接客中に(今回に限らず)私はボケもツッコミもしなかったけれど、私はあのお客様のそのあたりのご要望には応えてなくても、いいよね、仕事だし、関西在住中でもないし。とりあえずは、キティさんと息子さんの、遠征先での活躍を応援する念を飛ばしておこう。がんばれー。     押し葉

修羅場の解決

職場のバックヤードで、段ボール箱の整理作業をしていた。こいつ、しょっちゅうバックヤードにおるなあ、と思われるかもしれないが、バックヤードが乱れていると、私の労働志気がたやすく損なわれるため、売り場での接客や作業が混み合っていないときには、段ボール箱やゴミ周辺の整理整頓をできるだけ行うようにしている。すると、同僚の誰かがおそらく疲労のあまり意識がもうろうとしてうっかり丸ごと捨ててしまったのであろう商品と、たまに、ばったり、遭遇する。その商品たちは、たいてい、不要紙箱類をまとめて捨ててある段ボール箱の中から発掘される。すかさず救出した真新しい商品たちを売り場に持って出て、担当者に「あの、これって、要らなくて捨てました? それとも本当は売るものなのに間違えて捨てたんでしょうか?」と尋ねると、「うわーっ。これ探してたんです。どこにあったんですかー? えー? 他の紙箱と一緒に捨ててたんですか、わたし。わあ、すみませんー。ありがとうございましたー。うわー、よかったー、あったー」と言いながら、同僚がその商品をきゅうっと抱きしめることがある。だから、そんな、うっかり間違って捨てられた商品たちがいるかいないかの確認のためにも、バックヤードの整理作業は欠かせない。そういうわけで、その作業に励んでいたら、学校を終えて出勤してきた高校生アルバイト男子が、職員通用口から入ってきた。お互いに「おはようございます」と、夕方だけど、挨拶する。男子くんは、相手が私だと気づくと、すぐに、挙手するように片手をあげて、「あのっ、このまえの、別れました!」と丁寧に報告してくれる。

「そうですか。それは。そうでしたか。お疲れさまでした」
「はい。疲れました。まだちょっとへこんでます。あ、でも、仕事はちゃんとしますんで、大丈夫です」
「はい。今日はお客様多めなので、頼りにしてます。よろしくお願いします」
「あ、そうなんですか。じゃあ、がんばりますっ」

別れたり悲しかったり、そんなときには、いつもより、少し若干忙しく、立ち働くのがいいのかもしれない。     押し葉

青春の修羅場

職場の売り場メンテナンスをして、結果売り場で不要になった販促物をバックヤードで分別廃棄する作業をしていたら、高校生アルバイトの男子が、別の売り場で補充した後の段ボール箱を捨てに来た。いくつもの段ボール箱を分解して、板状に薄くして、別の大きな段ボール箱に並べて片づける作業をする間に、ふと、アルバイトくんが「あのう。ちょっと聞いてもらってもいいですか」と言いだした。

「はい。なんでしょう」
「仕事のことじゃないんですけど。あの、僕、この前、喧嘩して」
「えっ。また怪我したんですか?」
「いえ。今回は、男子との喧嘩じゃなくて、彼女との口喧嘩なんで、怪我はないです」
「ああ。そうですか。それならよかったー(このアルバイトくんは一年近く前に、喧嘩で腕を骨折して、片腕片手が、しばらくの間、使えなくなり、販売業アルバイトとしては、致命的な時期が一時期あった。お客様がお買い上げくださった商品を両手で持つことができないのでレジはできない、荷降ろしもできない、片手での前出し作業も補充も掃除も遅々として進まず、彼の労働力が半減していることが、現場としてはたいそう痛手であった記憶がまだある)」
「怪我はないんですけど。彼女と喧嘩して、でもそのあと、すっごく長いメールのやりとりを何回もして、一応、その件については仲直りしたんですよ。でも、彼女がなんか明日話がしたいって言ってきて、明日ここのバイト入ってないし、話をしに会いに行くつもりなんですけど、もともと彼女を僕に紹介してくれた僕の親戚の女の子がいて、あ、この親戚の子が彼女と仲のいい友達なんですけど、彼女からいろいろ話を聞いてるらしくて、なんか、別れ話するって言ってるけど、あんた何したんや、いうて言われてるんです」
「喧嘩のこと以外に、なにか、別れを切り出されるような心当たりはあるんですか?」
「特にこれ、ということはないと思うんです。でも、彼女としては、今回喧嘩したことで、急速に、僕に対する、熱い気持ち、みたいなものが冷めてる、って、メールでは言ってたんで、冷めたのかなあ、と思って」
「そうですかあ。それは、少し残念ですねえ」
「そうなんですよ。喧嘩するくらいいろいろ話せるようになって、仲直りもしたし、なんとか彼女の気持ちが戻るようにできないかなあ、と思って」
「それは、アルバイトくんとしては、引き続き、彼女とのお付き合いを継続したい意志がある、ということですかね」
「もちろん、そうです」
「せっかく仲良くなってきたのであれば、さらにもっと仲良くなりたかったりしますよねえ」
「そうなんです。それで、まえに、彼女を紹介してくれた親戚の子の家で、三人で集まって夜通し喋り倒したときがすっごく楽しくて、いっきに仲良くなれたかんじがあったんで、もう一回、親戚のおばちゃんと親戚の子に頼んで、泊まりがけで話させてもらおうかと思ったりもしてるんです」
「そうですか。それで、また、こう、なんていうんでしょう、お互いのタイミングみたいなものが、ぴったりと合って、お付き合い続けられそうだったら、そうできるといいですね」
「はい。僕、彼女の気持ちを取り戻せますかね。彼女は、僕のことは今も好きなのは好きなんだけど、でも冷めてる、って言うんです」
「そうですねえ。こういうのって、好きな気持ちや熱い気持ち以外にも、ご縁や勢いやタイミングみたいなものが大きく影響しやすいですから、とりあえず、やれるだけのことをやってみても、ダメなときには、それはそれで、ああ、ご縁とタイミングが合ってないんだな、ってことで、少し落ち込んで、立ち直って、それからまた元気出して、次いってみよう! で、いいんじゃないかと思いますよ」
「ええっ! 次、いくんですか?」
「あ、いやいや。今すぐじゃなくて、もしも、どうしても今の彼女とうまくいかないってことになったときには、そのまま彼女のこと待ち続けるのもいいかもしれないですけど、また別のご縁で恋愛力を鍛えるのも、ありなんじゃないかなあ、と思って。どちらにしても、青春はたいへんですね。がんばってください」
「そうなんですよ。ほんと修羅場です。でも、がんばります」
「(あ。アルバイトくん、「青春」と「修羅場」を聞き間違えたな、と思いつつ)青春の修羅場は、いろいろたいへんですよね。でも、その年頃のことは、その年頃の間に、がんばるしかないですからね」
「そうでしょうか。そうですよね。うん。わかりました。がんばってみます」

それにしても、高校生の恋愛話について、アルバイト先の薬剤師に相談しても、かなり仕方ないと思うのだけれど、彼はあれでよかったのだろうか。     押し葉

体温以外の要素

蚊の襲来に遭う理由には、体温の高さだけではなく、二酸化炭素の排出量や、汗の多さも関係あるらしいことは知ってはいるのだけど、そのどちらの要素も私は完璧にクリアしている。

狭い空間にしばらくいると自分の排出した二酸化炭素で息苦しくなり、換気せずにはいられなくなる。私が夫のそばに寄り添っていると、夫はまもなく「なんか、空気が薄くなった」と言いだす。「どんなにエコ対策商品を導入しても、我が家にみそきちがいる限り、うちの二酸化炭素排出量はかなり多いんやろうなあ。古い冷蔵庫並みかそれ以上に二酸化炭素出してるんちゃうか」と言う。

汗の量は、多い。勤務中も額やこめかみから、たらり、と汗がたれるたびに、お客様がその汗に注目してしまい、私が話す薬の説明を聞かなくなる現象がある。折々にちゃんと拭いてはいるのだけど、自分でも気付かないうちに汗が噴き出ていることがあり、同僚からも「今日、そんなに暑いですか?」と不思議がられたりする。職場での制服は白衣で、その下に着るティーシャツとさらにその下のサラファインインナー(汗取り下着)の内側の背中部分には、常時タオルをあてている。背中の汗を吸い取るためだ。背中全体をタオルで覆い、タオルの余りの部分は、襟足から背中に垂らす。ちょっとだけセーラー服風。垂らした部分は白衣の内側かティーシャツの内側だから、それほど目立ちはしないけれど、ばれる人にはばれる。そしてその背中のタオルは、帰宅した時には、しっとりとして、お風呂上りに体を拭き終えたタオルと同じくらいに濡れているから、抜き取って洗濯する。この背中あてタオルを入れずにいると、背中部分が汗でじとじとになって、白衣の背中までぴたぴたとした感触となり気持ちがよくない。勤務中以外にも、長時間背もたれのある椅子に座るような外出時(長距離ドライブや公共交通機関の座席利用や美容室の椅子などで)も、背中にタオルを入れて過ごす。私の担当美容師さんは、私が背中にタオルを設置する手際のよさに感心して、「どうやらさんは、背中にタオルを入れる選手権があったら、ぜったい優勝しますね。すごく上手です」と言ってくださる。

血液中の抗体状態が蚊にとって都合がよいかどうかについては、これだけ襲来を受けるということは、蚊にとって都合がよい状態だということなのだろう。できることならば、私の皮膚に蚊が着地した時点で、その部位の筋肉をぐっと硬くして、蚊の針が抜けないようにして、ぱちんっと退治したいのだけれども、なかなか蚊の着地に気づかない「ぼんやり具合」も、蚊界のアイドルとしての条件を満たしているということか。

けれど、だからといって、蚊に襲来されにくい体を目指すからといって、蚊に襲来されにくい夫を見習って、ショートピースを分けてもらって喫煙しようとは思わない。深い呼吸も心身共に気に入っているし、汗をかいてさっぱりするのもけっこう好きだ。特定部位の熱気はともかく、体に冷えがないことによる身体細胞全体の安心感も手放しがたい。そういう自分にとっての快適は快適のままで保ちつつ、蚊の襲来を減らす方向で、体づくりの各種研究を重ねてみようと思う。     押し葉

夫婦の温度

「アイドルは要求する」で、私の「蚊界のアイドル」ぶりを書いたところ、「体温が高いからではないか」という予想と指摘を何件かいただいた。また「自分の配偶者も(あるいはこどもたちが)たいそう蚊に好かれている」という情報もいただき、アイドル人口とライバルの意外な多さも知った。

体温に関しては、私の腋下での体温計測数値は、そんなにいうほど高いわけではない。低温期と高温期とで若干の差はあるものの、だいたい三十五度台後半から三十六度台半ばくらいで推移する。

体温計で計測できる数値としてはだいたいその程度でも、自分の体の特定の部位から、独特の熱気のようなものが放出されている自覚はある。その放出は、湯気にも似てはいるものの、見た目に分かるほどの水蒸気は伴っておらず、けれど、ゆらり、と空気の揺れが見えるような、少なくともそこに手をかざすと、もわああっとしたなんらかのエネルギーの流動を感じるものだ。その部位の外側も内側も両方ともにかなり熱い。世の中の気温や湿度の高さとは別の事情、自分のその部位の熱さで、自分でも身の持って行き場のない感覚を覚えることがちょくちょくある。

私の体から熱気を発する部位とは、上から順に、頭頂部の両脇、首、背中の第五頸椎あたり(肩甲骨と肩甲骨の間のへん)、太ももの内側、足の裏、となっている。どれくらい熱いかというと、たとえば、手のひらを凍ったアイスノンに押し付けると、手形のように、みょわーっと、低反発素材がその部分だけ沈むように、私の手の形で凍った部分がいっきに解けるくらい。

蚊たちは、私のその熱気に吸い寄せらせてくるのだろうか。少なくとも私のほうは、蚊たちの襲来を望んでいない。望んでいるのは、夫とのスキンシップだ。けれど、こちらは、私が熱くなれば熱くなるほど、世の中の気温と湿度が高くなれば高くなるほど、夫は私から距離をとる。抱きついて首と太ももを絡めて、私の足の裏を夫のふくらはぎか脛につけて、手のひら全体を夫の二の腕にあてて、完全な納涼態勢、ではなくて、スキンシップ態勢を整えるのであるが、夫は「やめてくれー」「おれは抱き枕じゃないー」「みそきちの熱でおれの細胞が壊れるー」などと訴えながら、体をほどいて逃げる。夫もいろいろ学習したらしく、私が夏場に夫に近付くと、すいーっと逃げる技を各種開発している。それでも私が「仲良しなのにー」「夫婦のスキンシップは大切なのにー」と訴えると、「ほら。ここに仲良く並んで、エアコンの風を一緒に浴びよう。涼しいよ」と私をいざなう。私はおとなしく夫の隣に並んで立ってみるけれど、しばらくすると、「どうやらくん。顔や胸や胴体は冷やくなるけど、私の熱気のポイントは、エアコンの前に立っても熱いままだよ。特に足の裏は、立ってるから、ずっと熱いよ」と訴える。夫は「それは仕方がないよ。それだけ足の裏が熱かったら、人間として生きていくのも大変じゃろう」と私をねぎらってくれる。「うん。わたし、けっこうがんばって生きてると思う」と応える。夫は「こうやって、みそきちの熱さに近寄れなくなってくると、今年もまた夏がきたなあ、ってかんじがするよなあ」と感慨深げだ。夫にとっての夏の季語は「あついみそ」なのかもしれない。夫はさらに、「みそきちの熱を、何か、発電とか、手かざし治療かなんかに有効利用できたらいいのになあ」とも言う。それは私もそう思う。

私としては「蚊界のアイドル」の座に対するこだわりも執着もまったくない。むしろアイドルの座からの引退を強く希望している。順調で円満なアイドルからの引退と同時に、順調で円満な夫婦のスキンシップを目指したい。自分の体が快適ですこやかでありつつも、蚊の襲来とは一線を画して暮らしていける、そんな体づくりの各種研究を重ねてみよう。     押し葉

闘う男児とそして女児

見えない敵と闘う男児」たちに謎を感じていたところ、かつての男児たち(その男児たちは少年たちに変身済み)の母をしている人から、「懐かしい!」という拍手コメントをいただいた。彼女の解説によると、その年の新番組の放映後、新しい戦隊もののポーズ(「変身ポーズ」「参上ポーズ」「解決ポーズ」など、種類がいろいろあるらしい)を一通りおぼえて、そらんじて真似ができるようになるのが、ちょうど今頃の暑くなる時期なのだそうだ。なるほど、そうなのか、謎解決。

別のかつての男児たち(すでにほぼ青年に変身済みのようす)の母をしている方からは、「うちの息子たちには、そのような傾向が見られなかった。引き続きの経過観察と報告を求む」という趣旨のメッセージをいただいた。ということは、あの現象(見えない敵と闘う現象)は、すべての男児に生じるわけではなく、そのツボにはまった男児たち特有のものなのかもしれない。

と思っていたら、別の、かつての女児(すでに少女に変身済みのようす)の母をしている方から、「女児(娘さん)もしていた」というお話をうかがう。なんと。男児に限らず女児も、ヒーローのポーズを決めるのか。職場のお菓子売り場では、女児がヒーローのポーズを決める姿は、まだ見たことがないけれど。

はっ。しかし、そういえば、私もかつて幼い女児だった頃、タイガーマスクベルトのつもりの紐を腰に巻きつけて(のちにチューインガムの点数を集めて母が応募してくれて当たった本物のタイガーマスクベルトを巻きつけるようになった)、タイガーマスクマントのつもりの風呂敷を背になびかせて駆け回ったり、坂道の途中で拳(こぶし)を天に突き上げてはなにやら型を決めてみたりしていたことを、今突如思い出した。

ずっと長いこと忘れていた遠い遠い遠い過去を突然に思い出すのは、けっこうびっくりするもんだなあ。     押し葉

見えない敵と戦う男児

本日のおすすめメニュー。「おいしそうなトド肉」
上記のトド肉缶詰のイラストのトドの親子は、いまだに我が家の食品庫で、微笑み続けている。

ところで、話は変わるのだけれど、暑くなると、職場のお菓子売り場の前で、「見えない敵と戦う」男児が、なぜか急激に増える。寒い時期や涼しい季節の彼らは、しゃがんでお菓子を選ぶことに専念していたような気がするのに、今の季節の彼らは、お菓子を選ぶことを忘れて、飽きることなく、売り場でポーズを決め続ける。同行の保護者達から「早く選べ」と急かされたその一瞬だけ、おもむろにお菓子を手に取り、買い物かごに入れるけれど、その後、お菓子売り場からレジまで歩いて移動する間も、延々ポーズを決め続ける。世の中の気温の高さは、彼ら男児の脳に、何か独特の影響を与えるのだろうか。それとも、あれは、実は彼らなりに、「暑さ」と闘う姿なのだろうか。もしかすると、私が気づいていないだけで、この時期になると、お菓子売り場には、ヒーローがパッケージに描かれた商品が、実はひそかに増えていて、彼ら男児の「闘争心」をにわかに刺激しているのだろうか。謎が謎を呼ぶ夏の男児。     押し葉

後部座席の協力

本日のおすすめ。「交通安全の神さま」

上記記事の理由により、減点になった私は、夫の実家滞在中に甥っ子たち(夫の妹の息子たち二人)を車に乗せるときにも、「はい、はい、きみたち。後部座席の人もきっちりシートベルトしてくださいよ」と言う。最初は、「なんで? 後ろの人はベルトせんでもええんじゃないん?」と言っていた彼らも、上記の理由を説明し、道路交通法上も後部座席のシートベルト着用が義務化されたのだと話して聞かせてやってからは、私の車に乗るとすぐに、「わかっとるよ。スピード違反で免許の点数やばいんじゃろ」と言いながら、かちっとシートベルトをつける。

そんなに、何度も、違反違反、言わんでいいから。点数やばい、とか、言わんでいいから。やばいというほどの減点じゃないし、もう点数は戻ってるし。と思うけれど、「そうよ。じゃけん、きみたちも、協力よろしく頼むよ」と言うことにしている。     押し葉

アイドルは要求する

今日の校正。「お墓参りのそのあとに」

お墓参りの時に、もっとも重要なことは、蚊の襲来に対しての備えを十分に行うことだと思う。私はことのほか、蚊に愛されているらしく、蚊界のアイドルとしての座に君臨し続けている。

夫は私のことを「蚊の仲間」や「虫の仲間」、あるいは「天然虫よけ(私のところに蚊が集まるから、他の人にとっては私の存在が虫よけとして機能する)」と呼び、「みそきちと一緒にいるときには、おれは虫よけスプレーもなんにもしなくても刺されないから便利だなあ」と言う。

蚊にとって、私の何がどうおいしそうに見えるのか、実際においしいのか、それとも、味の問題ではなくて、彼らの生存や繁栄に特別寄与する成分が何か私の中にあるのか、無断で私の血を吸い放題に吸う彼らには、それらについてのきちんとした説明を私に対してしてくれるように、鋭意要求してゆきたい。私の血を飲む(吸う)なら飲むで、赤みや腫れを作ったり、痒くなる汁を注入するのはやめてほしい。赤みや腫れやああいう痒みがあるからこそ、人体としては、蚊が媒体となる病気に対して警戒したり、各種体内処理を行ったりできるのだろうとは思う。けれども、日々手をかけている私の体なら、もうそろそろ、そういう警戒や体内処理業務に関しては、赤みも腫れも痒みもなくても行えるようになってほしい。蚊と自分の双方に対して、私は、いろいろ、期待している。     押し葉

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プロフィール

どうやらみそ

Author:どうやらみそ
1966年文月生まれ

ときどき、思い出したように、いただいたメッセージへのお礼やお返事をリンク先の「みそ語り」に書いています。よろしければ、いつでも、どうぞ、どなたでも、ご覧ください。「みそ語り」では、メッセージをくださった方のお名前は書いておりませんので、内容から、これは自分宛かしら、と推理推察しながら読んでいただければうれしいです。手の形の拍手ボタンからメッセージをくださる場合は五百文字以内、文字の方の押し葉ボタンからメッセージをくださる場合は千文字以内となっております。文字数制限なくお便りくださる場合には、下のメールフォームをご利用ください。

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